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どう中国と付き合うか 反日暴動から1年、平和友好条約締結から35年

釣魚島(尖閣諸島)「棚上げ合意」が
再確認された経緯を解明する
~1978年と1990年代を中心に~
――龍谷大学客員研究員 倪 志敏

倪 志敏 [龍谷大学客員研究員]
【第8回】 2013年10月23日
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去る9月14日に日中関係学会主催(中日関係史学会共催)の国際シンポジウム「現下の難局を乗り越えて~日中が信頼関係を取り戻すには~」が開催された。その中で日中二人の学者から、尖閣諸島(中国名・釣魚島)問題をいかに乗り越え行くかに関する報告があった。この報告に基づき2回にわたって、尖閣諸島問題超克の道を提案する。

ニイ・ジミン
専攻は戦後中日関係史、博士。中国国家博物館に勤務した後1992年に来日、一橋大学大学院で学ぶ。中央大学、一橋大学客員研究員等を経て、現在龍谷大学、桜美林大学客員研究員。共編著に『中国共産党七十年図集』、『浩然正気』等。主要論文に「池田内閣における中日関係と大平正芳」、「田中内閣における中日国交正常化と大平正芳」、「大平正芳と阿片問題」、「大平正芳内閣と中日関係」、「釣魚島(尖閣諸島)領有権問題に関する中日間の『棚上げ合意』の史的経緯」等。

第2回目は龍谷大学・倪 志敏客員研究員の論考。倪研究員によれば、「棚上げ合意」は1972年の日中国交正常化交渉時から存在し、その後も数回にわたって再確認されているとする。前回の川村論文と合わせて、読者のみなさんご自身が日中関係改善の棘として突き刺さっている尖閣諸島問題をお考えいただきたい。

中日間の「棚上げ合意」の原点

 今年は、中日平和友好条約締結35周年の節目に当たる。にもかかわらず、釣魚島問題で中日関係は国交回復以来最悪の状態に陥っている。とりわけ、釣魚島領有権問題に関する「棚上げ合意」があったか否かをめぐって、両国の立場は真っ向から対立している。こうした痛ましい現状を踏まえ、本稿は、日本側の第一、二次等の史資料に依拠し、「棚上げ合意」を形成した原点を簡潔に辿った後、1978年と1990年代を中心に、「棚上げ合意」が再確認された史的経緯を解明する。

 今日の中日関係の起点である1972年の復交交渉に関する会談で、釣魚島問題はいかに話し合われたのか。中国は「档案法」に基づき、その外交記録はまだ開示されていない。しかし、復交交渉のすべての会談に参加した張香山は回想録の中で、9月27日の第3回首脳会談で、両国はこの問題を棚上げにすることで合意したと明かした。この会談で、周総理は田中首相からの「お国の尖閣諸島についての態度をお伺いしたい」との質問に対し、「今回は話したくない。今この問題を取り上げてもいいことはない」と返答した。これを受けて、田中首相は、「それで結構です。これ以上言う必要はない。今後のことにしましょう」と明快に応じた(注1)

(注1)「張香山回想録(下)」『論座』33号 1998年1月 207頁。

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倪 志敏 [龍谷大学客員研究員]

ニイ・ジミン/専攻は戦後中日関係史、博士。中国国家博物館を勤務した後1992年に来日、一橋大学大学院で学ぶ。中央大学、一橋大学客員研究員等を経て、現在龍谷大学、桜美林大学客員研究員。共編著、『中国共産党七十年図集』、『浩然正気』等。主要論文、「池田内閣における中日関係と大平正芳」、「田中内閣における中日国交正常化と大平正芳」、「大平正芳と阿片問題」、「大平正芳内閣と中日関係」、「釣魚島(尖閣諸島)領有権問題に関する中日間の『棚上げ合意』の史的経緯」等。


どう中国と付き合うか 反日暴動から1年、平和友好条約締結から35年

昨年来、日中関係はかつてないほど悪化している。どう中国と付き合うか。これは私たち日本人にとって、非常に重要な政治的、経済的課題だ。世界第2位の経済大国となり、地政学的にも隣国である中国と、付き合わないということは不可能だし、その選択は現実的ではない。しかし、今の両国関係を冷静に見れば見るほど、関係を改善する事は困難に思えてしまう。いかに友好的な関係を築き、両国の国益を最大化していくか。その答えを探るために、ダイヤモンド・オンラインでは、昨年の中国交正常化40年に続き、反日暴動から1年、日中平和友好条約締結35年の今、日中の歴史、外交、防衛などの専門家にインタビューと寄稿をお願いした。

「どう中国と付き合うか 反日暴動から1年、平和友好条約締結から35年」

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