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野口悠紀雄「日銀が引き金を引く日本崩壊」

円安にもかかわらず
過去最高となった貿易赤字

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第26回】 2013年10月24日
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 貿易統計の9月分と2013年度上半期(4~9月)分が発表された。

 9月分について見ると、輸出は対前年同月比11.5%の増加、輸入は16.5%の増加となった。その結果、貿易収支はマイナス9321億円となり、月1兆円の赤字に近づいた。このままのペースが続けば年間12兆円程度の赤字となるが、実際にそうなる可能性は高い。

 輸出は伸びているように見えるのだが、数量指数は3ヵ月ぶりの減少になった。つまり、円安下であるにもかかわらず、輸出数量が落ち込んでいるのである。

 13年度上半期分について対前年度同期比で見ると、輸出は9.8%の増加、輸入は13.9%の増加だ。

 貿易収支は4兆9892億円の赤字だ。赤字額が大きいだけでなく、継続していることも問題だ。貿易赤字は15ヵ月間続いており、第2次石油危機時の14ヵ月間を抜いて、過去最長となった。

 12年秋からは、顕著な円安が進行している。普通であれば、円安は貿易黒字を増大させるはずだ。しかし、実際にはまったく逆のことが起こっているのである。

 以下では、この背景を分析することとしたい。

貿易赤字拡大が意味するもの

 2013年度上半期の貿易収支は、年度半期ベースで過去最大の赤字だ。

 上に述べたように、9月分の貿易収支はほぼ1兆円の赤字であり、年間12兆円程度の赤字となる可能性が高い。

 図表1に見るように、リーマンショック前には年間10兆円ないしはそれ以上の黒字だった。それと絶対値でほぼ同額の赤字に転じるわけだ。(なお、図表1に示す国際収支統計の貿易収支と、貿易統計における輸出・輸入の差額の間には、定義の差に基づく差異がある)。

 これは、つぎの2つの意味を持つ。

 第1に経常収支が赤字になる可能性を否定できなくなった。10月8日に発表された国際収支状況速報では、8月の経常収支は1615億円の黒字だ。しかし、前年比では63.7%の減となっている。

 貿易収支の赤字を補うには、所得収支の黒字が増え続けなければならない。しかし、8月の国際収支状況速報では、所得収支は1兆2530億円の黒字で、前年比10.0%減だった。したがって、年間10兆~15兆円程度しか期待できない。他方で、貿易・サービス収支は1兆0392億円の赤字だった。

 こうした数字からすると、13年度の経常収支が赤字に陥る可能性は否定できない。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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野口悠紀雄「日銀が引き金を引く日本崩壊」

日本銀行が新しい金融政策を決定した。今後2年間でマネタリーベースを2倍に増加させ、消費者物価指数上昇率を2%にするとしている。これを受けて、「円安が進行して輸出が増大する。輸出関連企業の利益が増大し、株価が上がる。日本経済は長く続いた停滞から脱却しようとしている」と考えている人が多い。果たして、この期待は、実現されるだろうか?

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