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野口悠紀雄「日銀が引き金を引く日本崩壊」

賃金引き上げのために何が必要か

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第28回】 2013年11月7日
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 賃金の引き上げが重要な政策課題として論議されている。物価を上げるのが重要なのではなく、賃金を上げることが重要だという当然のことが、やっと認識されるようになった。

 こうした認識の変化は歓迎したい。問題は、そのための政策である。以下では、賃金決定のメカニズムを考慮すれば、現在考えられている方策が見当違いであることを指摘する。

最近の賃金の動向

 日本の賃金は、長期的に見ると低下している。これについては後で分析することとし、まず最近の動向を見よう。

 この1年間の現金給与総額の動向は、図表1に示すとおりである。対前年比マイナスの月が多い。

 昨年秋以降、円安の進行によって輸出産業の利益は大幅に伸び、株価も上昇した。しかし、賃金の動向はそうした傾向とは無関係であることがよくわかる。

 他方、円安によって消費者物価は上昇している。このため、実質賃金指数の対前年比は、今年の7月以降マイナスの伸びを続けている。8月はマイナス2.0%であり、9月はマイナス1.2%であった。

 つまり、労働者の生活は貧しくなっているわけだ。アベノミクスの成果とは、国民を豊かにすることではなく、ごく一部の人々に株高を通じて巨額の利益をもたらしただけであったことを、この数字がはっきりと示している。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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野口悠紀雄「日銀が引き金を引く日本崩壊」

日本銀行が新しい金融政策を決定した。今後2年間でマネタリーベースを2倍に増加させ、消費者物価指数上昇率を2%にするとしている。これを受けて、「円安が進行して輸出が増大する。輸出関連企業の利益が増大し、株価が上がる。日本経済は長く続いた停滞から脱却しようとしている」と考えている人が多い。果たして、この期待は、実現されるだろうか?

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