9月の消費者物価指数は、全国総合で対前年比1.1%の上昇(生鮮食品を除く総合では0.7%の上昇、食料及びエネルギーを除く総合では0.0%の上昇)となった。

 これを伝える新聞等の見出しは、「デフレ脱却間近」と言ったトーンのものが多かった。これは、物価上昇をポジティブに評価する立場からのものである。

 しかし、現状には大きな問題がある。物価上昇は、輸入物価が上昇することによってもたらされている。とりわけ、エネルギー関係の価格が上昇していることの影響が顕著だ。これは、日本経済になんら望ましい効果をもたらさない。以下に見るように、生産活動と国民生活を圧迫するだけのことである。

輸入物価上昇は必ずしも
消費者物価を引き上げない

 円安になると、消費者物価が高まる傾向がある。しかし、必ずそうなるわけではない。

 第1に、ドル建て価格(一般的には現地価格)の影響がある。ドル建て価格が下落していれば、円安になっても輸入価格が上昇するとは限らない。逆に、為替レートが円高に動いていても、ドル建て価格が大きく上昇すれば、輸入価格が上昇することはありうるわけだ。ドル建て価格の変動がとくに大きいのは、原油価格だ。このため、原油価格の動向は消費者物価に大きな影響を与えるのである。

 第2に、企業の価格決定行動が影響する。輸入物価が円安によって上昇したとしても、輸入企業が利益を圧縮することでそれを吸収してしまえば、製品価格は上昇しない。したがって、消費者物価が上昇することにはならない。また、転嫁するにしても、時間がかかることがある。その場合、円安が進行してから消費者物価が上昇するまでには、一定のタイムラグがある。

 これまでの日本での主要な輸入品は、原材料であった。原材料価格の変動は、上記のメカニズムで企業が吸収し、価格に転嫁されない場合が多かったと考えられる。

 以上のような事情があるため、為替レート、輸入価格、消費者物価指数の関係は、複雑なものとなる。