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岸博幸のクリエイティブ国富論

賃上げ企業優遇の条件付き法人税減税が
格差を助長するという矛盾

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第240回】 2013年9月20日
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 安倍首相が来年4月の消費税増税のタイミングで法人税減税を行なう意向を明確にしました。しかし、報道を見る限り財務省は、法人税を下げても企業は内部留保に回す可能性があり、設備投資や賃上げの促進に的を絞った政策減税の方が効果は大きいと考えているようです。

 となると、この秋に設備投資減税をやり、来年4月の消費税増税時には、報道されているように、賃上げなどで人件費を増やした企業の法人税を軽減する「所得拡大促進税制」の手直しで終わる可能性が大きいといえます。では、賃上げした企業の法人税を軽減するというアプローチはどう評価すべきでしょうか。

賃金は生産性が上昇して初めて上がるもの

 私は、以下の2つの理由から、賃上げした企業の法人税の軽減というのはあまり評価できないと思っています。

 第1の理由は、経済学の教えから、賃金は基本的には労働者の生産性が上昇した場合に上がるのであり、生産性の上昇を伴わない賃金増を企業に求めても長続きしないからです。

 日本の労働生産性の伸び率は1990年代以降ずっと低迷を続けており、リーマンショック後も上昇していません。1994~2012年の日本の労働生産性の平均上昇率は年率1%程度であり、2%を超える米国の半分以下となっているのです。

 もちろん、アベノミクスによって企業は投資を増加させつつありますので、それが本格化すれば、それに伴って生産性も上昇することになりますが、そうなってこそ初めてボーナスなどの一時金に頼らない本格的な賃上げも可能となるのです。そうなる前から企業に賃上げを強いる法人税軽減措置を講じても、企業はあまり活用しない可能性が高いのではないでしょうか。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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