10月1日、安倍総理は来年度からの増税を正式に発表した。2014年4月1日から、今まで5%だった消費税が8%に、翌15年10月1日より10%に引き上げられる。消費税の引き上げは1997年以来17年ぶりのことであり、消費者ばかりでなく、事業者にとっても大きな問題だ。増税分をいかに吸収していくか、そして客離れと売上減をいかに回避するか。経営そのものに関わる課題を突如突きつけられた事業者にとって、不安は大きい。来年に入ってから準備を始めるのでは遅い。少なくとも今年中には、増税に対する心構えや具体的な準備の概要については把握しておきたいものだ。税務の専門家の意見を踏まえつつ、業界別に詳しく検証しよう。(取材・文/ジャーナリスト・高橋大樹、協力・プレスラボ)

消費増税による売上減を回避できるか?
年末にさしかかり現実味を帯びる不安

 2012年頃には1万円を切っていた日経平均株価だが、2013年初頭から今に至るまで1万円台半ばで安定的に推移している。株価上昇の背景には、安倍内閣の経済政策「アベノミクス」があると言えよう。

 同政策は、「デフレ脱却」というキャッチフレーズを生み出し、人々に景気回復への前向きな気持ちを与えた。もちろん、日本が抱える全ての経済的な問題が解決されたわけではないが、最近では上向き始めた経済指標もある。少なくとも「増税」発表に踏み切るための最低限の土壌はつくり出せたと言えよう。

 10月1日、安倍首相は首相官邸で記者会見を開き、正式な増税を発表。来たる2014年4月1日から、今まで5%だった消費税を8%に、翌15年10月1日より10%に引き上げる予定だ。

 経済学的に、デフレ時の消費税引き上げは短期的にGDPに悪影響を与えるとされている。1997年時の消費増後に景気が悪化したことが引き合いに出され、世間には不安が根強く燻っている。いくつかの金融機関からは、短期的のみならず長期的な景気の落ち込みを懸念する声も上がっている。

 企業にとって当面の問題になるのは、やはり増税圧力による売上失速やコスト増であろう。消費税が5%から8%になり、それが10%になったとき、負担を完全に商品やサービスへ価格転嫁できる企業が、いったいどれほどあるのだろうか。何の悩みもなく価格転嫁したり、実質値下げなどの具体的なコスト吸収策を持っている企業は、体力や立場の強い大手に限られており、中小企業の多くは頭を悩ませるはずだ。