中国製造業が自信を失っている。「世界の工場」と騒がれ、世界を席巻する「メード・イン・チャイナ」と一世を風靡したのも束の間、過去10年の栄光は衰退に転じようとしている。

 先ごろ、米誌フォーブスは、「世界の工場としての地位を失いつつある中国製造業界の反応は、80年代の米国と酷似する」とした記事を掲載した。同誌は中国製造業界の問題点を次のように指摘している。

『現在の苦境の原因を外部圧力のせいにし、自らの経営モデルを見直さない。従業員が低賃金と長時間労働を受け入れなくなった。中国の銀行は企業に対して低利の融資をしない。沿海都市の工場を、内陸部やアジアの他の国やアフリカ諸国へ移転させている。中国政府が政治的圧力を駆使して、企業を外国企業から保護するとの思い込みがある。数百万の企業経営者が、財産権を強化した法律を持つ国へ資金・資産を移転させようとしている』

 昨年、世界4大会計事務所の一つであるデロイト・トウシュ・トーマツと米国競争力評議会(U.S. Council on Competitiveness)が「2013年世界製造業競争力指数」を発表した。それによると、「2013年の製造業競争力の首位は中国であり、しかも今後5年間は中国が首位を保つ」と予測したが、その後の展開は決して楽観できないだろう。

 昨今、中国国内でも「中国如何与“世界工廠”説再見」(中国はどのようにして世界の工場にサヨナラを言うか)などの議論が持ち上がっている。世界の工場を「廉価な工業品を大規模に世界市場に供給する生産拠点」と定義するならば、労働コストが上昇に転じた中国では、“世界の工場”からの脱却を余儀なくされている。中国独り勝ちの時代は終わり、“世界の工場”の座を別の国に譲らなければならない。だが、中国はハイエンドな技術で勝負する世界の工場になれるかどうか。今夏、人気経済紙の中国経営報は、そんな危惧感を伝えていた。

 中国製造業の危機と、構造転換が進まないその理由は、上述した米フォーブス誌の記事に凝縮されている。さらにそれを煎じ詰めれば、「経営環境が悪化すれば、中央政府の政策が発動されるのを待ち、自らの経営モデルを見直さない経営者」と「工場で働きたがらない労働者にある」というわけである。