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あれだけの大金がどうしたら消えてなくなるのか?
「長野横領事件」に学ぶ厚生年金基金の杜撰と課題

真壁昭夫 [信州大学教授]
【第303回】 2013年11月26日
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厚生年金基金の元事務長逮捕
驚愕の使途不明金約24億円の行方

 11月14日、長野県建設業厚生年金基金の元事務長である坂本芳信容疑者が、滞在先のタイから帰国して逮捕された。同容疑者は、同年金基金の責任者として資金運用を事実上1人で担当しており、2010年7月に基金から引き出された約1億3000万円のうち、約6400万円を着服した疑いが持たれている。

 基金の調査によると、2005年6月から2010年9月までに約23億8700万円の使途不明金があるとされており、今後の調査によって同容疑者の横領金額はさらに増えると見られる。

 一方金融庁の検査では、先に年金消失問題が表面化したAIJ投資顧問への投資で約65億円の損失が発生したことに加えて、未公開株式投資でも約46億円の損失が出ていることが明らかになっている。

 そうした投資についても坂本元事務長時代に始まっており、横領や投資の失敗などで同氏が基金に与えた損失は、想像を絶する金額に上ると見られる。

 2010年、同氏は横領などの追及を恐れ、大金を所持してタイに逃亡し、持ち逃げした金を湯水のごとく使う豪勢な生活をしていたという。しかし、3年以上に及ぶタイの生活で金を使い果たしたことで困窮生活を強いられ、最後にはタイ警察に身柄を拘束され、日本に送還されて逮捕される羽目になった。

 この事件は、1人で多額の金を自由に使える立場になった男が、金を着服して豪勢な生活を求めて海外に渡ったものの、金が底を尽いて最後には哀れな姿を晒すという、一種古典的な物語と言えるだろう。

 問題は、1人の担当者がこれだけ多額のお金を着服したり、常識では考えられない運用手法によって多額の損害を発生させることができたということだ。そこには、外部からは計り知れない裏事情がある。

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真壁昭夫 [信州大学教授]

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員などを経て現職に。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。


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