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森信茂樹の目覚めよ!納税者

動き出した新たな私的年金創設構想
実現の成否は年金税制の仕組みにあり

森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]
【第62回】 2013年11月28日
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税制優遇付きの私的年金制度(日本版IRA)の検討が始まった。わが国金融資産1600兆円の活性化を通じ日本経済の成長を促す狙いだ。検討の「きも」は税制である。1階、2階の公的年金だけでなく、3階、4階部分の私的年金(企業年金・個人年金)税制についてもあるべき姿(グランドデザイン)を描きながら、スピード感を持って検討、導入してほしい。

 11月9日付日経朝刊は、一面トップで、「非課税の私的年金創設 金融分野で成長戦略 貯蓄から投資促す」と題する記事を掲載した。

 金融庁・財務省共同で立ち上げる「金融・資本市場活性化有識者会合」(座長は伊藤隆俊東大教授)の議論を先取りした記事で、以下の内容である。

 「米国で残高が5兆ドル(約500兆円)規模に達した個人退職勘定(IRA)を日本でも創設し、個人による株式や投資信託の購入を促す。IRAは一定の年齢まで個人が資金を積み立て、運用で得た利益を老後に受け取る制度」で、「金融庁の構想では、20歳以上65歳未満の個人が年間120万円程度の上限を設けて非課税にする。」

 実際、有識者会合は11月11日に第1回会合を開催し、年内に報告書を取りまとめる予定であると金融庁のホームページに明記されている。

 筆者は、本連載第28回の「個人の自助努力を支援する 私的年金=日本版IRA創設のススメ」で、この構想を取り上げたことがある。今後アベノミクス成長戦略として検討が始まるこの機会に、もう一度筆者の提案する日本版IRAの内容、趣旨、課題を整理してみたい。

 筆者の提案する日本版IRAは「(例えば)年間120万円という拠出額限度を設け個人が積み立て、一定年齢(例えば60歳)以降に引き出す場合には、運用益を含めて非課税とする」制度である。金融商品間の中立性を確保する観点から、預貯金、株式、株式投資信託等幅広い投資を認め、その中では損益通算も認める。

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森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]

(もりのぶ しげき)法学博士。東京財団上席研究員、政府税制調査会専門家委員会特別委員。1973年京都大学法学部卒業後、大蔵省入省、主税局総務課長、東京税関長、2004年プリンストン大学で教鞭をとり、財務省財務総合研究所長を最後に退官。その間大阪大学教授、東京大学客員教授。主な著書に、『日本の税制 何が問題か』(岩波書店)『どうなる?どうする!共通番号』(共著、日本経済新聞出版社)『給付つき税額控除』(共著、中央経済社)『抜本的税制改革と消費税』(大蔵財務協会)『日本が生まれ変わる税制改革』(中公新書)など。
 

 


森信茂樹の目覚めよ!納税者

税と社会保障の一体改革は、政治の大テーマとなりつつある。そもそも税・社会保障の形は、国のかたちそのものである。財務省出身で税理論、実務ともに知り抜いた筆者が、独自の視点で、財政、税制、それに関わる政治の動きを、批判的・建設的に評論し、政策提言を行う。

「森信茂樹の目覚めよ!納税者」

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