「生保の逆ざやが解消」
日経新聞の感慨深い記事
11月25日の『日本経済新聞』(朝刊)の一面トップ記事のメインの見出しは、「生保、逆ざや解消」だった。これは、一般の保険契約者にはピンと来ないかもしれないが、生命保険会社を知る人にとっては、感慨深いニュースだ。
記事は、主要9生保の今年の4~9月期の生保決算で、生命保険会社の利差損益がプラスに転じたとことを伝えている。
「利差損益」とは、保険を設計する際に用いた想定運用利回りである「予定利率」を、実際に生命保険会社が準備金を運用する利回りが上回ったり(利差益)、下回ったり(利差損)することで発生する損益のことで、日系大手生保は運用利回りが長らく予定利率を下回る「逆ざや」で、「利差損」の状態にあった。この利差損の累計は2000年以降だけでも9兆円を超すという。
日本の生保は、長年大きな利差損を、主に「死差益」と呼ばれる、保険設計時における死亡などのイベントの想定確率よりも、実際に契約者に起きたイベントが、保険会社にとって有利なものであったことから生じる利益で埋めていた。
たとえば、契約者の長寿化が進んで、死亡保障の生命保険が設計時に想定した死亡率よりも死亡率が下がるような状況になると、死差益が生まれる。端的に言って生保各社は、保険会社側に有利な確率の想定を下に商品を設計して、死差益を出して、運用利回りの逆ざやによる損を埋めていた。
この構造の一部が、今年になって変わった。時代は変わるのだ。
逆ざやの解消は、生命保険会社にとっても保険契約者にとっても結構なことだが、まだ安心はできない。
生保の逆ざやが生まれた理由を理解し、過去の教訓を将来に活かすのでなければ、同質の問題がまた繰り返される可能性がある。