
日本生命保険から三菱UFJ銀行に出向していた社員が、銀行の内部情報を不正に持ち出していた案件が波紋を広げている。「逆流厳禁」というインパクトの大きな文言を付して、社内で共有していたことが明らかとなったからだ。ただ、その内部情報が機密情報に該当するか否かは現時点では不明であり、冷静な実態調査や議論を進めることが肝要だ。そこで連載『ダイヤモンド保険ラボ』の本稿では、この問題の論点を深掘りする。(ダイヤモンド編集部編集委員 藤田章夫)
インパクトが大きかった
「逆流厳禁」の文言

Q 2025年7月15日に朝日新聞デジタルが報じた、日本生命保険の出向者が三菱UFJ銀行の内部情報を不正に持ち出した案件が、生保業界で波紋を広げています。

A 「逆流厳禁」と書かれた内部文書の写真が掲載されていましたが、インパクトがあまりにも大きすぎましたね。

Q まったくですね。翌16日に予定されていた日本生命の記者懇談会では、急きょ会の冒頭に役員たちが壁際にずらっと並び、朝日智司社長が謝罪する事態となりました。

A かつてない記者懇談会となりましたね。会が始まってからも朝日社長の周りを記者が取り囲み、質問を繰り返していました。


Q また、18日深夜には、金融庁から保険業法に基づく報告徴求命令が発出されました。

A 日本生命にとって11年ぶりの事態です。三菱UFJ銀の案件について、事実関係の確認や真因分析、再発防止策を報告せよというものです。

Q 日本生命の出向者が不正競争防止法に抵触するような悪質なことをしたというイメージが広がっていますが、実際のところはどうなのでしょうか。

A 現時点でそこまで悪質だと断罪するのは、時期尚早ではないでしょうか。

Q それはなぜですか?