特定秘密保護法案は26日に衆議院本会議に緊急上程され、自民、公明、みんなの党の3党の賛成により可決、参議院に送られた。
注目の日本維新の会は採決を棄権。みんなの党は江田憲司前幹事長が「強行採決に抗議」して退席。1年生議員の井出庸生、林宙紀両議員が同法案を「官僚統制強化法案」として反対した。
賛成バスは、みんなの党が乗り込むと、維新の乗車を待たず、それを振り払うようにして発車した。どうしたのか。
やはり、日増しに強まる世論の批判によって法案が葬られるのを恐れたのだろう。維新の乗車を待っていたら、群集に囲まれてバスが動かなくなる。だから発車に踏み切ったに違いない。
それにしても、あえて党議に反しても反対した井出庸生、林宙紀両議員の行動には心底から敬意を表したい。1年生としてはあまりに重すぎる決断。おそらく長く深い苦悩の末に辿り着いた結論だったのだろう。
とりわけ井出庸生議員は、与党との修正協議の一翼を担っていたから一層悩み深い。だが、トップ会談による頭越しの修正合意によって修正に向けた彼の努力は水泡に帰してしまった。ここで沈黙して党に従うか、それとも自己の信念を貫いて反対するか。その岐路に立って、彼は淡々と後者の道を選んだのだ。
戦後保守政治の屋台骨
“自由”と“民権”を毀損しかねない
私は彼の祖父である故・井出一太郎先生のことを思い出している。
昭和61年に引退するとき、私に「日本の政治を翼賛政治にだけはしないで下さいよ」と言った。自由と民権を掲げた穏健で強靭な保守政治の流れが細まり始めていることを最後まで心配していたのである。
長野県の佐久の井出家には、かつて中江兆民が逗留したことがある。そのとき中江が書いた扁額は今も井出家の応接間に飾ってある。