ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
野口悠紀雄 未曾有の経済危機を読む

対中国貿易の回復は幻想にすぎない、
再び「失われる10年」の入口に立つ日本

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第56回】 2010年1月30日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

 IMF(国際通貨基金)による「世界経済見通し」(IMF、World Economic Outlook)が改定された。改定版では、世界の実質GDPの対前年成長率が、2009年の-0.8%というマイナス成長から抜け出し、2010年には3.9%、2011年には4.3%と、プラス成長に転じると予測されている。これは、前回(2009年10月)の予測からの上方改定である。つまり、世界経済の回復は、これまで考えられていたよりは順調に進みそうだということだ。

 国別に見ると、とくに注目されるのは、イギリスについての状況改善である。前回(2009年10月)と比べると、実質成長率が、2010年は0.4%ポイント、2011年は0.2%ポイントほど上方改定されている。

 それに対して、日本についての数字を前回と比べると、2010年は据え置きで、2011年については0.2%ほど下方改定された。

なぜ日本の回復が遅いのか

 各国ごとに2007年を1として2011年の実質GDPの指数を計算してみると、【図表1】のとおりとなる。

 まずアメリカは、2010年において2007年の水準を回復し、2011年にはそれより3%ほど高くなる。つまり、アメリカは2010年において経済危機から抜け出し、それ以降、順調な成長軌道に乗るわけだ。

 イギリス、ドイツは、2011年において、ほぼ2007年の水準を取り戻す。

 それに対して日本は、2011年になっても、2007年より2.8%ほど低い状態にしか回復しない。これからはっきりわかるように、日本の回復は他国に比べて遅くなると予測されているのだ。

 こうなる理由は、つぎのようなことであると考えられる。

 第1に、この連載(第53回54回55回)ですでに見てきたとおり、産業別の回復度で見ると、金融業と情報関連産業の回復が顕著である一方、製造業の利益は、大きく落ち込んで回復しない。そうなるのは、金融業と情報関連産業では雇用を調整すれば企業の業績が回復するのに対して、製造業では過剰設備の負担が残ってしまうからだ。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR


おすすめの本
おすすめの本
消費税だけでは財政再建できない!「日本を破滅から救うための経済学」

経済論争の最大のトピック=デフレ問題から、赤字国債発行の問題点、年金の破綻、消費税増税、円安誘導の為替政策まで、主要論点を網羅。いずれのテーマでも、通説と一線を画す内容に驚愕すること必至。綿密なデータの読み込みに裏付けられた、野口教授のマクロ経済政策論!1680円(税込)

話題の記事

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

------------最新経済データがすぐわかる!------------
『野口悠紀雄 使える!「経済データ」への道』


野口悠紀雄 未曾有の経済危機を読む

突如として世界中を襲った経済危機。激流に翻弄される日本経済はどうなってしまうのか? なすべき対策はあるのか? 100年に1度の未曾有の事態を冷静に分析し、処方箋を提示する野口悠紀雄の緊急連載!

「野口悠紀雄 未曾有の経済危機を読む」

⇒バックナンバー一覧