去る12月1日。日本女子プロゴルフツアーの全日程が終了しました。注目されたのは、最後の最後まで白熱の賞金女王争いを演じた横峯さくら選手。5月に1年半ぶりの優勝を遂げると、これまでの不振が嘘のように勝利を重ね、年間を通じた総合的な活躍度を評価するメルセデスベンツ・プレーヤー・オブ・ザ・イヤー・ランキングでは見事1位に輝きました。
その横峯選手がインタビューで頻繁に口にすることで、スポーツニュースや新聞紙上で再三取り上げられた「OKライン」という言葉をご存じでしょうか? 実はこの言葉こそが彼女の躍進を支えた原動力であり、その考え方を提唱し、彼女に伝授したのがメンタルトレーナーの森川陽太郎さんなのです。
前後編でお伝えする本記事、今回は森川さんに「『OKライン』とは何か?」に加えて、ビジネスや受験勉強はじめ幅広い分野で活用できる「本番力」の高め方の秘訣も教えていただきました。

「ここまでできればいいよ」と
自分自身でOKを出せる基準をつくる

——早速ですが、横峯選手のインタビューやブログに何度も出てきた『OKライン』とは何でしょうか? この言葉が今季の成績に大きな変化をもたらしたと彼女自身も感じていらっしゃるようです。

森川陽太郎(もりかわ ようたろう)
1981年東京生まれ。元サッカー選手。 スペインやイタリアでプレー。その後心理学やメンタルトレーニングを学び、27歳で株式会社リコレクトを設立。「OKラインメンタルトレーニング」という独自のメソッドを展開。
様々なスポーツの日本代表選手をサポートし、2012年・2013年ミス・ユニバース・ジャパンオフィシャルトレーナーとしても活動中。大手企業の社員研修も担当し、ビジネスマンの目標達成、ストレスマネジメント、モチベーションなど様々な問題を解決している。
著書に、『「いつもの自分」トレーニング』(ダイヤモンド社)、『ネガティブシンキングだからうまくいく35の法則』(かんき出版)。

森川「自己肯定感を持つことができるか、自己否定感を持ってしまうかを分ける基準ですね。簡単に言うと、自分が自分自身に対してOKをあげられるラインのことです。自分が”ダメだったか”、”ダメではなかったか”を判定するとき、さかい目となるのが『OKライン』です」

——いわゆる目標、ゴールなどとも言い換えられそうですが。

森川「仕事でも勉強でもスポーツでも、何かをするときには誰でも『このくらいの売上を立てたい』『試験で●点取りたい』『◯位になりたい』など、結果に対して目標を立てますよね。もちろん、それ自体は悪いことではありません。ただ、その結果に対する基準、つまり『OKライン』の設定を誤ると、逆効果になることが多いんです。

 何かに物事に取り組むときには、最終的なゴールというものがありますが、はじめからそれだけを考えてしまうと、それに見合わない結果しか出せない自分に否定的な感情を持つことになります。『こんなはずじゃないのに』という思いが自己否定につながり、自信を失ってしまう。自信を失ったメンタル状態で取り組むことでさらにパフォーマンスが落ちる。そういう負のサイクルに入るケースがよくあります」