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5つのポイントで占う2014年

消費税アップに間に合わない
情報システムが多発する!?
――国立情報学研究所・佐藤一郎教授

佐藤一郎 [国立情報学研究所・教授]
【第12回】 2014年1月27日
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②情報システムにおける消費税率の変更作業が間に合わない

 2014年全体というよりは、3月末までの短期の動向になるが、情報システムの消費税率アップへの変更作業が遅れている企業は少なくないようだ。担当者はたいへんだが、なんとか間に合わせてもらいたいものである。

 ここでは消費税率変更作業が遅れている背景を考えたい(以下は当事者にとっては常識でしょうが、意外に世間には知られていないので紹介する価値はあるでしょう)。

 遅れている背景の一つは改修すべきソフトウェアが増えていること。消費税の税率が5%になったのは1997年。当時と今では使われているソフトウェアの数が違う。当時は多くの企業にとって消費税に関わるのは基幹系システムぐらいで、税率変更時はその基幹系用のソフトウェアだけを改修すればよかった。

 しかし、いまは至る所でソフトウェアが使われていて、その中で消費税率と関わるソフトウェアは少なくない。例えば担当者がExcel上で簡単な財務状況を予測するマクロを自作している場合、そのマクロも改修対象となり、こうした改修対象のソフトウェアを調べ切れていない企業も少なくないようだ。

 二つ目は稚拙なソフトウェアが少なくないこと。少しでもプログラミング経験のある方ならばおわかり頂けると思うが、まともなプログラムならば、消費税率を表す変数を一つだけ用意して、そこに税率(2014年3月末までならば0.05という数値)を入れる。例えば税込み価格を計算するときは、税抜き価格×(1+変数)という計算をするようにプログラムを書く。税率が変わったときは、その高々一つの変数の中身を変えれば済む。

 しかし、実際には稚拙なプログラムが少なくない。前述の変数などを使わずに税率を直接書き込んでいるプログラムも少なくない。例えば税込み計算をさせる処理では、税抜き価格×1.05という計算をさせている。そうなると改修対象のプログラムから当該の処理を見つけるだけでも大きな手間がかかる。

 また、これと関わるが、税率を一桁だと前提にしているシステムがあると、8%に税率が上がった場合はいいとしても、10%に税率があがったときに問題が出る。2000年問題を思わす状況だが、内部処理は複数桁数の税率に対応していても、画面表示などでは一桁の税率を前提にしているシステムはありえる。その場合、10%になると1や0と表示されてしまうかもしれない。

 三つ目は3月末までの5%の税率と4月からの8%の税率の切り替えへの対応方法。切り替え時期にシステムを停止できるか、仮に停止できないとすると税率パラメータを変えるだけで、システムを止めることなく対応できることが望まれる。

 また、切り替えるタイミングも要注意だ。24時間営業のコンビニエンスストアなどの場合、売上などの締め処理は日付通りではなく、客数が少なくなる、深夜の2時や3時に締め処理を行うことが多い。その締め処理のタイミングで税率変更すると、2時や3時までは5%で販売してしまうことがあり、税法上の問題が出ないか吟味しておくべきであろう。

 また、どうしても古い伝票などの処理が残るから、4月に入ってから数ヵ月は過去に遡って処理が必要となり、処理に応じて5%と8%のどちらかに切り替える仕掛けも必要となることも留意すべきだ。

 4つ目は税込みか税抜きか。小売の場合、商品価格は税込み表示(内税)、つまり消費税を含んだ価格での表示が多いが、4月以降、スーパーは税抜き表示(外税)にするところが増えそうである。つまり、店頭では商品に消費税分を含まない価格を表示して、レジで会計するときに消費税を加算することになる。

 ただ、内税を前提にしていた既存システムを外税に変えるのは簡単ではなく、ソフトウェアの改修作業は大きくなる。先日、小売業界のITに詳しい方に伺った打開策は、情報システムでは従来通り、内税で処理して、店頭表示やレジの会計処理だけ外税にする方法だそうだ。一見よさそうだが、消費税率をかけたり、割ったりするので一円単位では金額がずれることが出てくる。そのずれが積み重なると税務署も黙認できない金額になる可能性もある。

 いずれにしても消費税率変更まで時間はない。実際、テストや変更作業を考えると1月末、遅くても2月上旬に終わらせないと、その企業だけでなく、顧客や仕入れ先に迷惑をかけることになる。

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佐藤一郎[国立情報学研究所・教授]

国立情報学研究所アーキテクチャ科学系教授。1991年慶応義塾大学理工学部電気工学科卒業。1996年同大学大学院理工学研究科計算機科学専攻後期博士課程修了。博士(工学)。1996年お茶の水女子大学理学部情報学科助手、1998年同大助教授、2001年国立情報学研究所助教授、を経て、2006年から現職。また、総合研究大学院大学複合科学研究科情報学専攻教授を兼任。
専門は分散システム、プログラミング言語、ネットワーク。


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