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ビッグデータからIoT(モノのインターネット)へ

佐藤一郎 [国立情報学研究所・教授]
【第11回】 2014年2月5日
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 今年に入って、IT系のメディアでは、ビッグデータに代わって、IoT(Internet of Things)やM2M(Machine-to-Machine)というキーワードが目立ってきました。トレンドの潮目が代わってきているのでしょう。以下ではIoTとM2MをひとまとめにIoTと表記します。

IoTとビッグデータの違い

 ビッグデータが終わって、IoTが次のトレンドになるのでしょうか? これは単純ではありません。というのは研究者からみると、ビッグデータも、IoTも向いている方向は同じなのです。どちらもデータを通じて現実世界を扱いますが、このときデータの分析や処理に主軸をおけばビッグデータですし、現実世界に関するデータの収集に主軸をおけばIoTとなります。

 実際、ビッグデータにおけるデータ分析は、対象となる大量なデータを生み出す仕組みがなければできません。あるいは、センサーなどを通じてデータを収集しても、生データのままでは活かせませんから、何らかのデータ分析や処理が必要となります。つまり、ビッグデータとIoTは両輪なのです。

 むしろ、いまIoTが注目される背景が重要です。ビッグデータは、当初から本丸は現実世界のデータといわれていましたが、現状はSNSやネットゲーム、EC(エレクトリックコマース)など、ネットの世界のデータへの活用が中心になっています。

 実際、ネット系のサービスは大量にデータを生み出し、その量があまりに多いために、従来技術では分析することが難しかったことから、Hadoopなどの新しい技術がネット系のサービスによって生み出され、その技術がいまのビッグデータの基本となっています。

 さて、ビッグデータの本丸とされた、現実世界に関するデータ分析が進まなかった大きな理由は、現実世界に関して機械処理できるかたちでのデータが少ない、またはそのようにデータを集めるのが難しいことがあります。

 まず、データを収集するセンサーなどのインフラが現実世界にはまだ普及していません。例えば、2012年12月の笹子トンネルの事故後に、トンネルの経年劣化を調べるためにトンネル内にセンサーを設置することが望まれました。しかし、既存設備にセンサーを設置することは簡単ではありません。そもそもセンサーを設置する財政的な余裕もありません。さらに技術的な制約もあります。センサー技術そのものは進んでいますが、多数・多様なセンサーを統合し、センサーが測定したデータを収集することは簡単ではありません。

 一方、IoTはセンサーを含むデバイスを、ネットワークを介して統合して、デバイス間で情報を交換できるようにする技術です。前述の技術課題の解決には大きな役割を演じるでしょう。そして今後、センサーによる現実世界のデータを集めるインフラが普及すれば、IoT関連ビジネスは大きな市場が期待できます。

 まとめるとビッグデータの本丸である現実世界のデータを収集・分析しようとしたら、実際には現実世界のデータを集める技術やインフラが進んでいなかった。それを開発・整備しようという動きが、いまのIoTというキーワードになって表れているのでしょう。

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佐藤一郎[国立情報学研究所・教授]

国立情報学研究所アーキテクチャ科学系教授。1991年慶応義塾大学理工学部電気工学科卒業。1996年同大学大学院理工学研究科計算機科学専攻後期博士課程修了。博士(工学)。1996年お茶の水女子大学理学部情報学科助手、1998年同大助教授、2001年国立情報学研究所助教授、を経て、2006年から現職。また、総合研究大学院大学複合科学研究科情報学専攻教授を兼任。
専門は分散システム、プログラミング言語、ネットワーク。


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分散システムの研究を核としつつ、ユビキタス、ID、クラウド、ビッグデータといった進行形のテーマに対しても、国内外で精力的に発言を行っている気鋭のコンピュータ・サイエンス研究者が、社会、経済、テクノロジーの気になる動向について、日々の思索を綴る。

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