7月10日、神奈川県藤沢市の生コンクリート業者、六会コンクリートが、JIS(日本工業規格)に適合しない生コンを規格品と偽り、神奈川県内の196ヵ所の現場に納入していたことが発覚した。さらにこれらの現場のうち5ヵ所でポップアウト現象(打設後のコンクリートの表面が剥がれ落ちる現象)が発見された。

 今回の偽装で驚くほど多くの大手ディベロッパー、ゼネコンに甚大な影響が出ている。野村不動産、オリックス不動産、扶桑レクセル、東京建物、日本綜合地所、積水ハウスなどの大手ディベロッパーは現在販売中の物件にこの規格外生コンが使われていた可能性があるとし、安全が確認できるまでの期限で該当物件の販売休止を決めた。なかには500戸以上の大型案件も多く含まれ、ディベロッパーにとっては大打撃である。

 六会コンクリートという一地方企業にすぎない生コン業者の偽装がこれほどまでに大きな影響を及ぼす背景には、生コン業界の特殊な納入形態がある。

 ディベロッパーからの工事を受注したゼネコンは、まず商社経由で生コンの発注を行なう。商社はそれを、各地方の生コンクリート協同組合に発注。最終的にどの業者が生コンを納入するかは、組合が加入企業に振り分ける仕組みとなっているという。さらに、公平を期すため、1つの現場に2~3社の業者を参加させる。

 こうして中小でも多くの現場への納入が可能になるが、その結果、「最終的な瑕疵担保責任を負う売り主側も、直接工事を担当するゼネコン側も、誰も生コン業者と直接の接点を持っていない」(ゼネコン業界関係者)ことになる。

 建築現場では、打設前に指定の流動性を持つ生コンが納入されたかを調べる試験は行なうものの「製品の成分を現場で調べることなど不可能」(同上)で、偽装生コンの使用を食い止める手段はない。

 事態を受け、国土交通省は学識経験者による技術検討委員会を設置。2ヵ月程度で規格外生コンが使われた建物の強度や継続使用する際の問題点などを検討する。現時点では「構造上深刻な被害をもたらす可能性が出てくるとは考えにくい」(枡田佳寛・宇都宮大学教授)というが、打設後に時間が経過したらどのような状況になるかは不明である。

 検討委員会で具体的な対処の方向性が決まるまでは、住宅以外にもトンネルや学校などの公共施設も含まれる約300ヵ所の現場で工事がストップ。さらに三井不動産などのように、販売ずみの物件を抱えるディベロッパーのなかには「顧客への引き渡しが大幅に遅れることが予想されるため、一度すべての契約を解約する」(三井不動産)措置を余儀なくされるところも出てきている。

 販売不振に悩むマンション業界には、まさに泣きっ面に蜂の生コン偽装。収束の方向性は当面見えそうもない。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 鈴木洋子)