2月は暦の上では春になります。とはいえ、1年で1番寒さが厳しいのがこの時期ですね。12月の冬至を境に「陽気」が増して「陰気」が徐々に減ってゆきます。陽気とは自然界では「太陽の気」、つまり温かい気のことです。

 実は、体の中にも陽気と陰気が存在します。陽気には体を温める力があり、陰気には体を冷ます(余分な熱を除く)力があります。このバランスが崩れると、更年期障害でよく起こる「のぼせ」などの症状が現れることがあります。これは体の余分な熱を取る陰気の気が少なくなって起きた症状「陰虚」と捉えられます。

 高齢者や虚弱な体質の人に見られる冷え(手を触ると冷たいなど)は、体の中の陽気が足りなくなり、体を十分に温められなくなったことで起こる症状で、「陽虚」といいます。

 体の中にある陰気と陽気は、年齢とともに自然に少なくなっていくのが普通です。先に陰気が少なくなり、次に陽気が少なくなるケースが多く見られます。男性のED(勃起障害)も漢方では陽虚が原因の一つといわれています。

 この陰気や陽気を食材や生薬で補い、さらに年齢による不足を補おうとするのも薬膳です。ニラ、エビ、羊肉、鹿肉、スズメ、ナマコ、クルミ、杜仲などが陽気を補く食材です。ちなみに、薬膳でEDの改善に用いられるのは、このうちエビ、ナマコ、鹿肉、スズメなど。

 陽気を補う食材はすべてが冷えの改善に用いられます。寒い季節、これらの食材を上手に利用して冷えを防ぎましょう。

 特にご紹介したいのは、中国の後漢末期に記された医学書に載っている「羊のスープ」。陽気を補う羊肉に、ショウガと当帰という血を補う漢方薬を加えて作られたスープです。このスープは冷えに悩む方、貧血の方、高齢者の虚弱、産後の貧血などに最適です。お肉が食べられない方には、スープだけでも薬効があります。

●お料理ヒント
羊肉150グラムは一口大に切り、酒大さじ2をかける。当帰5グラム、薄切りにしたショウガ6グラムを鍋に入れ、水3~4カップを注いで火にかけ、沸騰したら弱火にして10分ほど煮る。羊肉を加えてさらに30分ほど煮たら、塩で調味する。ネギの小口切りなどを振っていただく。好みでこしょうを加えてもOK。