1964年の東京五輪では、開催前に日本全国で大規模なインフラ整備が行われ、大会終了後も高速道路やトンネル、公営住宅などの建設が短期間で次々に進められた。日本の高度経済成長を物語るエピソードだが、2020年大会を6年後に控えた現在、同時期に造られたそれらのインフラが一斉に老朽化し始めるという問題が発生している。しかも、これらの老朽インフラのメンテナンスだけで年間8兆円以上かかるという試算もあり、借金だらけの日本にとって新たな頭痛の種となっている。

2つの東京五輪と
老朽化するインフラの問題

 東京五輪を前に、開催国として避けて通れない問題の1つに、インフラの老朽化がある。

 舛添要一新東京都知事は12日に行った就任記者会見で、2020年の東京五輪開幕までに首都高速道路の大規模改修を終えたいと表明している。高速道路3社は先月、総延長約9000キロの路線のうち、約2100キロ分が老朽化による激しい損傷を受けた状態にあるという調査結果を発表。老朽化対策に3兆円が必要との試算を出している。

 また、政府も12日に全国の高速道路が抱える老朽化問題で対策費を確保するため、高速道路の有料化を2065年9月まで延長する改正案を閣議決定している。

本連載第1回では「五輪レガシー」について紹介したが、1964年の東京大会では五輪が起爆剤となり、日本の経済発展や社会改造が大きく進められた。東海道新幹線や東京モノレールが開業し、首都高速や名神高速道路が五輪開幕に合わせて整備された。

 海外では奇跡的とも評される戦後日本の経済成長は、短期間で行われたインフラ整備なしでは実現しえなかったものでもあるが、それらが50年経った今、一気に老朽化を迎え、ガタがきている。