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悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史

一度捕獲されたらスキルも人脈も奪われてお払い箱!
部下を食って出世する「肉食専務」の飽くなき野望

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第30回】 2014年2月18日
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 人を食って生きる――。これが、この会社の専務取締役の評判である。管理職の中には、「肉食専務」と陰口を言う者もいる。冷めたまなざしでこの専務を見つめる元部下たちも、多数いる。

 今回は、主に10歳までくらいの子どもを対象にした玩具を製造し、販売する中堅玩具メーカーのA社(正社員数約300人)で、「社長候補ナンバー1」と目される専務の元部下を取材した。その男性は、斎藤直樹氏(仮名・36歳)。筆者とは3年前に知り合った。会社員の生き方をテーマにした筆者のコラムを読んで、感想をくれたことがきっかけである。

 現在はこの玩具メーカーとは別の小さな会社で働いているが、数年前まで「肉食専務」の部下として悶え苦しんでいた。その頃、彼はどんな気持ちで日々を過ごしていたのか。彼を苦しめた職場の課題とは何だったのか。

 読者諸氏も、一緒に考えてみてほしい。


30代前半の自分がなぜ工場へ
追い払われなくてはいけないのか?

 2012年8月下旬、A社本社3階の会議室。ここでの話し合いで、斎藤は当時の上司であった企画部の部長(後の「肉食専務」)との縁を切ろうと思った。

 部長である40代半ばの望月(現在の専務)が、よく通る声で話す。

 「人事(部)も君のことを思い、引き取る部署を探してくれたのだから……。ありがたいと思えよ」

 他部署への異動についての説明だった。斎藤はここ数年の部長との衝突を思い起こした。仕事の進め方などをめぐり、十数回は職場で言い争いをした。だが、まさか異動になるとは覚悟していなかった。部員10人ほどのうち、斎藤たった1人が異動となる。

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史

 企業で働くビジネスマンが喘いでいる。職場では競争原理が浸透し、リストラなどの「排除の論理」は一段と強くなる。そのプロセスでは、退職強要やいじめ、パワハラなどが横行する。最近のマスメディアの報道は、これら労働の現場を俯瞰で捉える傾向がある。

 たとえば、「解雇規制の緩和」がその一例と言える。事実関係で言えば、社員数が100以下の中小企業では、戦前から一貫して解雇やその前段階と言える退職強要などが乱発されているにもかかわらず、こうした課題がよく吟味されないまま、「今の日本には解雇規制の緩和が必要ではないか」という論調が一面で出ている。また、社員に低賃金での重労働を強いる「ブラック企業」の問題も、あたかも特定の企業で起きている問題であるかのように、型にはめられた批判がなされる。だが、バブル崩壊以降の不況や経営環境の激変の中で、そうした土壌は世の中のほとんどの企業に根付いていると言ってもいい。

 これまでのようにメディアが俯瞰でとらえる限り、労働現場の実態は見えない。会社は状況いかんでは事実上、社員を殺してしまうことさえある。また、そのことにほぼ全ての社員が頬かむりをし、見て見ぬふりをするのが現実だ。劣悪な労働現場には、社員を苦しめる「狂気」が存在するのだ。この連載では、理不尽な職場で心や肉体を破壊され、踏みにじられた人々の横顔を浮き彫りにし、彼らが再生していくプロセスにも言及する。転機を迎えた日本の職場が抱える問題点や、あるべき姿とは何か。読者諸氏には、一緒に考えてほしい。

「悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史」

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