米国経済は、80年代から90年代にかけてニューエコノミーを作り上げ今日の繁栄につなげている。既存の重厚長大産業からIT産業への新陳代謝を遂げたのだが、その要因として、レーガン2期の法人税率引き下げとクリントン時代のパススルー事業体LLCの活用があげられる。わが国アベノミクスがそこから学ぶ点は多い。

成長戦略実施に不可欠な
法人税改革と新たな事業体

 アベノミクスの三本目の矢は、「日本再興戦略」と称されている。しかし「日本経済の再興」が、円安・株高になったことによる既存重厚長大産業の業績回復だけでは、外部環境が変化すればまた経済不振に陥りかねない。

「再興」というからには、企業家のアントレプレナーシップを刺激し、新規企業を興し、経済活動の新陳代謝を図り、わが国経済の若返りを図るものにする必要がある。

 参考になるのは、80年代、90年代の米国経済政策・税制で、製造業からIT産業への転換と若返りが図られ、経済の重心が東海岸から西海岸へシフトした事実である。

 私は、80年台半ばのレーガン大統領の2期目の前後に、ロサンゼルス領事館に経済担当領事として勤務し、米国経済の変貌を目の当たりにした経験があるので、それを踏まえて考えてみた。

レーガン2期目の法人税改革は
なぜ税制改革のお手本と言われるか

 まずはレーガン第2期(1986年)の法人税改革である。

 この改革は、税収は変えずに、「課税ベース(税を課税する対象)を拡大して税率を引き下げる」もので、税制改革のお手本とも金字塔とも称されている。

 課税ベース拡大には、特定の事業者・事業を優遇する特別措置を廃止し、公平な税制にするという意味がある。その財源で「税率を引き下げる」ということになると、皆の負担を等しく軽減するので、投資効率が高まり新規企業が興りやすい条件整備につながる。