「プレステ4」がようやく日本でも発売された。北米ではバカ売れで、そのために品切れ状態で日本での発売が延びたとか、日本での発売日にも家電量販店の前に行列ができたとか、そんな話を聞くと景気が良さそうだが、これがソニー復活の兆しになるかというと、残念ながらそんなわけはない。むしろ、僕には最後の徒花にしか見えないのが悲しい。
ではなぜ、徒花なのか。それは、プレステ4がいくら売れても、ソニー復活にはほとんどなにも貢献しないと思うからだ。理由を説明しよう。
プレステ4にない、
「未来を指し示す何か」
まず、売上についてだが、ゲーム市場というのは世界規模で見ても6兆円程度だと言われている。ファミ通の調べによれば、2013年の国内市場4000億円程度。ハードに関しては約1500億円だ。つまり、年間売り上げ約7兆円の企業が盛衰をかけるにはあまりに小さい市場なのである。
ちなみに、スマホ市場の規模は、米ラスベガスで開催されている国際家電見本市の主催者CEAの発表によれば、2013年の出荷数は約10億台で平均単価が345ドルなので、市場規模はざっと35兆円くらいだと推計できる。これに、テレビ、オーディオ、パソコン、プリンタなどを合わせた情報家電機器市場は1兆ドル、つまり100兆円を越えるという(日本経済新聞記事より)。
ソニーが復活するには、この100兆円市場で勝っていく必要があるわけで、パソコン事業から撤退、テレビ事業も子会社に移管しいずれは撤退と見られているなかで、プレステ4がいくら売れても焼け石に水出あることはご理解いただけるだろう。
しかし、プレステ4がソニー復活の兆しとならないのは、何も売上だけのことではない。マーケティングというのはそう単純なものではなくて、たとえ売上比率が低くても、その企業の成長に寄与する場合もある。それは、コンセプトに斬新さというか、その業界の未来を指し示す何かがある場合だが、プレステ4にはそれもない。
今回の目玉機能は「自分がプレイしている画面を他のユーザーとSNSで共有できる」というものらしいが、正直に言って僕には、この機能がコアなゲーム・オタク以外の一般ユーザーにとって、どのような価値があるのかさっぱり理解できない。
ご存じのとおり、いまのゲームの主戦場はスマホにあるわけで、そんな時代にリリースされるプレステには、やはり据え置き型のゲームマシンの将来的な役割、意味を指し示すものが必要だ。つまり、機能強化ではなくパラダイムシフトが必要だが、それができなくて大失敗したプレステ3の教訓が、今回のプレステ4で生かされていない。
コアなゲームファンにはそれなりに評価されて売れていくのだろうが、というか実際に売れているようだが、それは既存顧客の満足度を満たしたというだけの話で、新しい市場を作るような話ではない。ゲーム専用機から始まり、携帯ゲームを経てスマホに移行しているゲーム市場に対して、新しいビジョンが何も示せていない。そこにソニーが抱える問題の本質がある。