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出口治明の提言:日本の優先順位

東京マラソンやヨーロッパの小都市に学ぶ
「地域おこし」の枠組み

出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役会長]
【第110回】 2014年3月4日
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 地方に講演にうかがったりすると「東京は景気もよく若い人が多くていいですね。地方は、それはもう疲弊して大変です」などと言われることが多い。「どうしたら地域おこしがうまくいきますか」などともよく聞かれる。そこで今回は、地域おこしの枠組みについて考えてみたい。

大原則は「件数×単価」

 古今東西を通じて、すべての生業の大原則は、「件数×単価を最大化」することにある。これは普遍的・絶対的な真実である。ひとつの地域であれ、ひとつの施設であれ、たくさんの人(件数)が訪れて、たくさんお金を落とせば(単価)、その地域や施設は潤うことになる。

 例えば、2007年から始まった東京マラソンは、3万6000人のランナーが走り、それを支えるボランティアは1万人以上、見守る観衆は172万人を超えると言われている。これだけ多くの人が集まれば、例えば飲み物だけでも膨大な量が消費されるだろう。交通網が規制されるにもかかわらず、タクシー業界も喜んでいるという。それは、選手を応援する人が頻繁にタクシーを使って移動するからだ、というのだ。東京マラソンは、まさに、件数×単価の原則をものの見事に具現していると言えよう。ここに、地域おこしの大きなヒントがいくつも隠されている、と考える。

多くの人を集める方法

 地域おこしのためには、まず、多くの人を集める必要がある。では、多くの人が集まる誘因は何か。それは面白いこと(≒ワクワクすること)とアクセスが便利なことではないか。ワクワクする場所(例えばディズニーランドや世界遺産)や、ワクワクする催し(東京マラソンやお祭りなど)があれば、人は何となく行きたくなるものだ。

 場所(いわゆる「箱モノ」)と催しでは、一般的に言えば後者の方が圧倒的にコストは低くなる。ディズニーランドを作るのは大変だが、東京マラソンなら設備は何も作らなくていい。ハードよりソフトが大切なのだ。ただし、一回性のソフトでは駄目だ。リピート客の多寡が商売の帰趨を決めるように、ワクワクする催しも、リピート客を誘因するような仕掛けを上手に埋め込むことが肝要である。

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出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役会長]

1948年、三重県美杉村生まれ。上野高校、京都大学法学部を卒業。1972年、日本生命保険相互会社入社。企画部や財務企画部にて経営企画を担当。生命保険協会の初代財務企画専門委員会委員長として、金融制度改革・保険業法の改正に従事。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て同社を退職。その後、東京大学総長室アドバイザー、早稲田大学大学院講師などを務める。2006年にネットライフ企画株式会社設立、代表取締役就任。2008年に生命保険業免許取得に伴い、ライフネット生命保険株式会社に社名を変更、同社代表取締役社長に就任。2013年6月24日より現職。主な著書に『百年たっても後悔しない仕事のやり方』『生命保険はだれのものか』『直球勝負の会社』(以上、ダイヤモンド社)、『生命保険入門 新版』(岩波書店)、『「思考軸」をつくれ』(英治出版)、『ライフネット生命社長の常識破りの思考法』(日本能率協会マネジメントセンター)がある。

ライフネット生命HP

 


出口治明の提言:日本の優先順位

東日本大地震による被害は未曾有のものであり、日本はいま戦後最大の試練を迎えている。被災した人の生活、原発事故への対応、電力不足への対応……。これら社会全体としてやるべき課題は山積だ。この状況下で、いま何を優先すべきか。ライフネット生命の会長兼CEOであり、卓越した国際的視野と歴史観をもつ出口治明氏が、いま日本が抱える問題の本質とその解決策を語る。

「出口治明の提言:日本の優先順位」

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