消費税増税が間近に迫ってきた。だが、「給与所得控除」の段階的縮小、毎年の「厚生年金保険料」の引き上げなど、家計の負担増は消費税増税にとどまらない。では実際に家計にはどのくらいの負担が発生するのか。大和総研の試算を基にその実態に迫った。(取材・文/ジャーナリスト・大高志帆)
今年の4月から現在5%の消費税率が8%へ、さらに2015年10月には10%へと、2段階で引き上げられる予定だ。実に17年ぶりの消費税増税である。前回は、増税に先行して3年間、所得税・住民税が減税されたため、短期に見た家計への負担はプラスマイナスゼロだった。
しかし、今回は家計への大きな負担軽減措置が見られないどころか、すでに始まっている「復興増税」や「年少扶養控除」の廃止なども重なっている。さらに今後は、4月に「年金」支給額の引き下げ、6月には「住民税」均等割の引き上げ、2016年 からは「給与所得控除」の段階的引き下げ、毎年の「厚生年金保険料」の引き上げ……と、頭の痛い制度改正が続く。
「実質可処分所得」で
本当の負担を予測
そこで本稿では、大和総研金融調査部・是枝俊悟研究員の試算を基に、2011年から2016年までの家計の負担を前後編に分けて追っていく。重要なのは、消費税以外の税・社会保障の改正も考慮したという点だ。そのことにより、世帯構成や年代、収入の違いによって、家計への影響がいかに異なるのかが見えてくる。
もう1つ、是枝氏の試算では、家計を「実質可処分所得」という考えに基づき比較しているのもポイントだ。一般によく用いられる「可処分所得」とは、“税引き前の収入から、所得税、住民税、社会保険料を引き、児童手当(子ども手当)を足した金額”。家計において“自由に使えるお金”ということになるので、可処分所得が多いほど暮らしに余裕があると言える。
しかし、消費税率が引き上げられると、ほとんどのモノやサービスの価格が上がり、通常は物価も上昇する。大和総研では、消費税が1%引き上げられると、物価は0.72%上がると予測。可処分所得から物価上昇分の影響を勘案した「実質可処分所得」、つまり“手取りで現在(消費増税前)の物価に換算していくら分のモノやサービスを購入できるか”を比較している。このため、より私たちの実感値に近いのだ。なお、収入には変化がなく、消費税増税以外の要因では物価が変わらないものとする。