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上久保誠人のクリティカル・アナリティクス

「EUは資源国ロシアに逆らえない」は本当か?
ウクライナ情勢の今後を地政学で読み解く

上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]
【第77回】 2014年3月10日
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ウクライナ出身の
あの人は今どこに?

 欧州で人気があるユーロビジョン・ソング・コンテストという番組がある。欧州放送連合(EBU)加盟放送局によって開催される、毎年恒例の音楽コンテストで、各国代表のアーティストがそれぞれ生放送で自らの楽曲を披露し、それぞれの参加国が他国に投票して大会の優勝者を決定する。コンテストはほぼ欧州全域で生中継されている。1956年の第一回大会以来、毎年開催されている長寿番組である。いわば、欧州における「レコード大賞」「紅白歌合戦」のような位置づけの番組であるといえば、わかりやすいだろう。

 筆者は英国在住時、毎年ユーロビジョンをBBCで観るのを楽しみにしていた。その中で特に強いインパクトを残したのが、2007年の大会にウクライナ代表として出場した女装の男性歌手、ヴェールカ・セルジューチカであった。派手派手の衣装にバックダンサーを従えたヴェールカは、「Dancing Lasha Tumbai」(YouTube)という楽曲をコミカルに歌い踊った。

 ヴェールカのパフォーマンスは、さまざまな意味で物議を醸した。まず、伝統あるユーロビジョンに「女装した男性歌手」が出場することの是非。そして、この曲でヴェールカが連呼した「Lasha Tumbai」という言葉が問題となった。「Lasha Tumbai」が「ロシア・グッバイ」と聴こえたからである。ヴェールカは「モンゴル語でホイップ・クリームという意味だよ」とトボけたが、在モスクワモンゴル大使が「それはgibberish(ちんぷんかんぷん)だ」と反論した。一見コミックソングを装った楽曲が、実は「反ロシア・ソング」なのかどうか、大論争となったのである。

 物議を醸しながらも、ヴェールカの強烈なパフォーマンスは欧州各国から高い得票を得て、2007年ユーロビジョンの第2位に入賞した。「Dancing Lasha Tumbai」は、フランス、ドイツをはじめ、欧州諸国でヒットチャート上位にランク入りしたのだ。ヤヌコビッチ政権崩壊、ロシア軍によるウクライナ南部のクリミア半島の掌握というウクライナ情勢の悪化を見て、「そういえば、あの、おじさん(おばさん?)歌手はどうしているのだろう」と、ヴェールカのことを思い出した。

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上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]

1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。博士論文タイトルはBureaucratic Behaviour and Policy Change: Reforming the Role of Japan’s Ministry of Finance。

 


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国際関係、国内政治で起きているさまざまな出来事を、通説に捉われず批判的思考を持ち、人間の合理的行動や、その背景の歴史、文化、構造、慣習などさまざまな枠組を使い分析する。

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