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田岡俊次の戦略目からウロコ

クリミア半島の紛争を収めるには
“協議離婚”の方が合理的

田岡俊次 [軍事ジャーナリスト]
【第23回】 2014年3月6日
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ソチ・オリンピックの閉会式の前日、ロシアのプーチン大統領が「兄弟国家」と呼ぶウクライナで大変事が発生した。親露的なヤヌコビッチ大統領を議会が解任、同大統領は逃亡、ロシアに救いを求めたのだ。現在、同国内のクリミア自治共和国を支援するロシアとロシアの介入を非難する米国・EUという対立の構図になっている。だが、クリミアがウクライナに帰属した歴史的な経緯や民族の構成をみれば、無理にくっつけておくよりも、チェコとスロバキアのように円満に“協議離婚”をする方が内戦よりはるかに合理的だ。

フルシチョフが出身地ウクライナに移管

 黒海北岸ソチでの冬季オリンピックは2月23日無事に閉会式を迎えた。厳重な警備態勢でチェチェン人のテロ活動の抑え込みに成功し、ロシアの再興を華やかに演出したこの大会はプーチン大統領にとり最高に晴れやかな舞台となるはずだった。ところが閉会式の前日の22日、彼が「兄弟国家」と呼んだウクライナで大変事が発生した。親露的なヤヌコビッチ大統領を議会が解任、同大統領は逃亡、ロシアに救いを求めたのだ。閉会式でプーチン氏は笑顔を振りまいたが、内心はそれどころではなかったろう。

 ロシアは「今もヤヌコビッチ氏がウクライナの正統な大統領である」とする。大統領制の国で、国民が直接に選出した大統領を議会が解任するのは容易ではない。ウクライナ憲法では大統領に重大な非違行為があれば、議会の決議で調査委員会を設置し、その報告を受けて議会が弾劾決議をして解任できることになっている。今回はそのような手順を取っておらず「議会が解任を決議しても法的に無効」という理屈は一応成り立つが、本人が国外逃亡したのだから超法規的事態で、一種の革命だろう。この事態にプーチン大統領は「ロシア系住民と国益を守る必要がある」として、議会に武力行使の承認を求め、露国の上、下両院は3月1日、全会一致でそれを可決した。これに対しウクライナ暫定政権は予備役の招集を決定し戦争の構えを示した。

 最大の争点はクリミア半島だ。ウクライナ地方は1240年モンゴル軍に制圧されてキプチャク・ハン国の版図になり、同ハン国が分裂した後もクリミア・ハン国は1783年にロシアがクリミアを併合するまでオスマン・トルコ帝国の属国として存続した。それ以来クリミアはロシア領だったが、1953年にスターリンが死亡したのち第1書記となったフルシチョフはウクライナ出身だったため、1954年にウクライナと地続き(幅8kmのペレコープ地峡でつながる)のクリミア半島をロシアからウクライナに移管した。

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田岡俊次 [軍事ジャーナリスト]

1941年、京都市生まれ。64年早稲田大学政経学部卒、朝日新聞社入社。68年から防衛庁担当、米ジョージタウン大戦略国際問題研究所主任研究員、同大学講師、編集委員(防衛担当)、ストックホルム国際平和問題研究所客員研究員、AERA副編集長、編集委員、筑波大学客員教授などを歴任。動画サイト「デモクラTV」レギュラーコメンテーター。『Superpowers at Sea』(オクスフォード大・出版局)、『日本を囲む軍事力の構図』(中経出版)、『北朝鮮・中国はどれだけ恐いか』など著書多数。


田岡俊次の戦略目からウロコ

中国を始めとする新興国の台頭によって、世界の軍事・安全保障の枠組みは不安定な時期に入っている。日本を代表する軍事ジャーナリストの田岡氏が、独自の視点で、世に流布されている軍事・安全保障の常識を覆す。さらに、ビジネスにも役立つ戦略的思考法にも言及する。

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