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“ひとり勝ち”のセブン銀行
投資家の過度な期待に深まる困惑

週刊ダイヤモンド編集部
2008年12月2日
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 米国発の金融危機で邦銀各行が軒並み減益となるなか、セブン銀行の“ひとり勝ち”の状況が鮮明になっている。

 中間決算発表時に2009年3月期の純利益予想を149億円から164億円に引き上げたことを受け、11月初旬以降、株価は上場来高値圏で推移、不況に強い数少ない銘柄として投資家からの期待が高まる一方だ。

 だが、当のセブン銀行関係者から聞こえてくるのは、過度な期待への困惑の声である。というのも、同行のビジネスモデルはすでに成熟期にさしかかっているからだ。

 01年にイトーヨーカ堂を主体に設立され、ATMの運用に特化した銀行としてスタートした同行は、貸し出しや資金運用は行なわず、売上高に当たる経常収益の95%は提携金融機関からのATM受け入れ手数料で成り立っている。

 つまり、他行に口座を持っている預金者がセブン銀行のATMからおカネを引き出した場合やノンバンクからの借り入れ、返済を同行のATMを通じて行なった場合に支払われる手数料収入が収益のほぼすべてなのである。

 収益を増やすには、ATM設置台数を増やすか、1台当たりの利用件数を増やすか、あるいは1件当たりの手数料単価を引き上げるかしかない。

 だが、セブン-イレブンとイトーヨーカ堂はほぼ全店にATMの設置が完了、過去6年間で一気に1万3000台強にまで急拡大させた設置台数は今後、空港や駅などグループ外への設置も含めて11年3月末までに1万6000台までしか増えない。1台当たりの利用件数や手数料単価もこの先は微減が見込まれている。

 投資家は住宅ローンなど新規事業拡大による収益アップを期待するが、ノウハウがないうえに大きなシステム投資を伴うので、かえって利益の足を引っ張りかねない。

 そこはセブン銀行側も承知しており、あくまでもATM運用に特化していく方針。ここは、「投資家の声に惑わされないことが肝心」と、金融業界の収益構造に詳しい富樫直記氏(フューチャーフィナンシャルストラテジー社長)は指摘する。

(『週刊ダイヤモンド』編集部委嘱記者 田原寛 )

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