黒田「量的・質的金融緩和」の成績
日銀の黒田総裁が就任して1年がたった。就任直後の4月4日には「量的・質的金融緩和」を打ち出し、株高・円安などの効果を生み出した。黒田日銀はこの1年で、日本経済の歯車をデフレ脱却に向けて大きく動かしたと評価できる。
1971年慶應義塾大学経済学部卒業、同年に日本経済新聞入社。松山支局、産業部、編集委員などを経て、1991年テレビ東京に異動。経済部長、テレビ東京アメリカ社長、理事・解説委員長などを歴任。その間、「ワールドビジネスサテライト(WBS)」など多くの経済番組のキャスター、コメンテーター、プロデューサーを担当。2006年にテレビ東京を退職。現在、大阪経済大学客員教授をつとめながら経済評論家として活動。
黒田総裁が就任して以降の消費者物価指数をみると、昨年3月の「生鮮食品を除く総合指数」は前年同月比0.5%下落と、まだマイナスだった。それが同年6月にはプラスに転換、その後もプラス幅を拡大し、今年1月には1.3%上昇となった。これは2008年10月以来、5年3か月ぶりの高い上昇率だ。
だがもっと重要なのは「食料とエネルギーを除く総合指数」の上昇だ。やはり昨年3月にはマイナス0.8%だったが、今年1月には0.7%上昇となった。この上昇率は実に1998年8月以来なのである。「食料とエネルギーを除く」は原油価格などの要因を除いた動き、つまり国内の需給をより反映するもので、デフレ脱却を判断するうえで重要なのである。
現在までの消費者物価上昇率については、「その要因は円安によるものであり、デフレ脱却には程遠い」との見方が多い。たしかに円安要因はあるが、それだけではない。消費者物価を品目別にみると、 これまで“デフレの主犯”と言われたテレビやパソコン、カメラなどもすでに上昇に転じている。これが「食料とエネルギーを除く」の上昇に表れているのであり、明らかに国内需要の高まりによって物価が上昇、つまりデフレ脱却に向かって動いていることを示している。この点を過小評価すべきではないと思う。