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伊藤元重の新・日本経済「創造的破壊」論

「電力小売を自由化しても料金は下がらない」という、電力業界関係者の意見は正しいか?

伊藤元重 [東京大学大学院経済学研究科教授]
【第53回】 2014年3月31日
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電力業界と航空業界の比較

 「小売自由化をしても電気料金はそれほど下がらないのではないか」。業界関係者からはよくそんな話が聞こえてくる。電力にはスケールメリットがあるので、これまでのように地域全体を見る電力会社が全体を管轄したほうが、結果的には電力コストは安くなるというのだ。

 世界有数の料金の高さを誇る(?)日本の電力業界の方がそういう話をしても、あまり説得力はない。それに、電力小売の自由化を進めていくことには、単に目先の料金を競争によって引き下げるだけではなく、電力システムのネットワーク全体の構造変化や技術革新などを通じて、長期的な電力利用の効率化を図るという重要な目的があるのだ。

 「自由化を進めていけば料金が下がるのかどうか」という問題は、たとえば航空業界での経験と比較してみればよい。

 航空業界で料金自由化が導入されて久しいので忘れている人も多いかもしれない。だが、その問題を議論した当時は、自由化しても料金は下がらないだろう、という意見が業界関係者から多く出てきた。

 当時の航空業界の人々の議論は、既存の技術やビジネスモデルを前提にしたものであった。既存企業はその仕組みの下で必死になってコスト競争を繰り広げている。その前提で議論をすれば、自由化をしても料金が安くなるはずはない、という見方しかできないだろう。

 現実としても、自由化を始めた当初は、目に見えるようなかたちで航空料金が下がったわけではない。むしろ料金が上がった路線さえあった。低料金を標榜して参入した航空会社のなかには破綻したところも少なくない。自由化しても料金は下がらなかった、という意見が力を増したこともある。しかし、自由化から10年~20年経った現在の時点で見れば、航空自由化が航空業界を大きく変える原動力になったことは明らかだ。

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伊藤元重 [東京大学大学院経済学研究科教授]

いとう もとしげ/1951年静岡県生まれ。東京大学大学院経済学研究科教授。安倍政権の経済財政諮問会議議員。経済学博士。専門は国際経済学、ミクロ経済学。ビジネスの現場を歩き、生きた経済を理論的観点も踏まえて分析する「ウォーキング・エコノミスト」として知られる。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」コメンテーターなどメディアでも活躍中。著書に最新刊『日本経済を創造的に破壊せよ!』(ダイヤモンド社)等多数がある。


伊藤元重の新・日本経済「創造的破壊」論

「アベノミクス」によって大きく動き始めた日本経済。いまだ期待が先行するなか、真に実体経済を回復するためになすべき「創造」と「破壊」とは? 安倍政権の経済財政諮問会議議員を務める著者が、日本経済の進むべき道を明快に説く! 

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