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伊藤元重の新・日本経済「創造的破壊」論

自由化で新規参入続々!
活況を呈する電力小売市場の本質とは?

伊藤元重 [東京大学大学院経済学研究科教授]
【第52回】 2014年3月24日
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電力小売市場への
新規参入ラッシュ

 最近の報道を注意して見ていると、電力の小売市場にさまざまな異業種が参入していることに気づくはずだ。いくつか興味深いところを例としてあげてみたい。

 まず、携帯電話のソフトバンクが大々的に電力小売市場への参入を表明している。ソフトバンクというと、これまでも太陽光発電など、上流の発電分野に積極的に投資をしてきたが、小売市場への参入にも積極的だ。

 5000万人近くの顧客を持つソフトバンクは、他企業に比べて電力小売事業に有利な存在である。利用者サイドから見れば、通信料金と電力料金をセットにして割り引いてもらえるという利点が出てくるかもしれない。そういえば、ケーブルテレビ会社も、ケーブルテレビとセットで電力を購入すれば、電力料金が割引になるというサービスを展開しているようだ。

 東京ガスも電力小売事業に積極的に参入しようとしている。ガスと電力はもともと競合しやすい分野だ。電力会社は大量の天然ガスを輸入する存在なので、いつでもガス事業に参入できる。同じように、ガス会社もガスで発電をすれば、電力供給をすることが可能である。

 最近の動きで興味深いのは、そのガス会社が電力の小売事業に積極的に参入しようとしている点だ。マンションの電力を一棟まとめて供給するようなビジネスには、ガス会社も参入しやすいのだろう。まとめて電力を供給することで低料金を打ち出すのだ。

 電力小売事業におけるもう1つの興味深い動きは、旧来からの電力会社が地域を超えたビジネス展開を始めていることだ。特に注目されるのは、大市場である首都圏だ。ここは東京電力の管内だったが、中部電力や関西電力などが小売事業で参入しようとしている。中部電力は、三菱商事が長年育ててきたダイヤモンドパワーという会社を買収して、中部地方以外での小売事業の展開を広げようとしている。

 電力小売は、以前から大口需要の部分では自由化が行われていた。そこでは価格は自由化されており新規参入が続いた。ただ、発電から送電・配電まで垂直的に押さえている電力会社の独占状態は続き、新規業者が大幅にビジネスを拡大することにはならなかった。

 ここにきて、そうした姿は大きく変わりつつある。政府が電力小売の完全自由化を打ち出したのだ。今国会で審議する法案で小売自由化を進める予定だが、これによって一般家庭なども含め、すべての分野で電力小売の完全自由化が進むはずである。

 電力小売は7兆円を超える市場規模だと言われる。どこまでを電力小売市場に含めるかについてはいろいろな議論があるが、いずれにしろ大変巨大な市場であることは確かだ。そこが自由化され、さまざまな業種が参入しようとしている。

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伊藤元重 [東京大学大学院経済学研究科教授]

いとう もとしげ/1951年静岡県生まれ。東京大学大学院経済学研究科教授。安倍政権の経済財政諮問会議議員。経済学博士。専門は国際経済学、ミクロ経済学。ビジネスの現場を歩き、生きた経済を理論的観点も踏まえて分析する「ウォーキング・エコノミスト」として知られる。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」コメンテーターなどメディアでも活躍中。著書に最新刊『日本経済を創造的に破壊せよ!』(ダイヤモンド社)等多数がある。


伊藤元重の新・日本経済「創造的破壊」論

「アベノミクス」によって大きく動き始めた日本経済。いまだ期待が先行するなか、真に実体経済を回復するためになすべき「創造」と「破壊」とは? 安倍政権の経済財政諮問会議議員を務める著者が、日本経済の進むべき道を明快に説く! 

「伊藤元重の新・日本経済「創造的破壊」論」

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