「サービスする=値引きする・タダにする」という認識から脱却し、それそのもので収益が見込める「サービス」を産業として確立するための取り組みとして、経済産業省が推進しているのが「おもてなし経営企業選」。2回目となる平成25年度の募集では全国から165社の応募が集まり、厳しい審査を経て28社が選定された。
「おもてなし経営企業」の3つの要素
去る3月27日、第2回目となる「平成25年度おもてなし経営企業選」の選出記念式典が東京・千代田区のイイノホールで開催された。
オリンピック招致のプレゼンテーションがきっかけで、「もったいない」に継ぐ国際的日本語となった感のある「おもてなし」。この言葉を冠した企業選考を経済産業省が始めたのは昨年度からである。
社員の意欲と能力を最大限に引き出していること、地域・社会との関わりを大切にしていること、顧客に対して高付加価値・差別化サービスを提供していること──。その3点において秀でた経営をしている企業を「おもてなし経営企業」に選出すると経産省は説明している。
選考過程は、自薦からスタートする。「おもてなし経営」を実践していると自ら考える企業が選考に応募し、NPO関係者、学者、ジャーナリストなど計9人からなる選考委員が書類選考を行う。その後、経営者ヒアリング、企業訪問といった選考過程を経て、最終的に「おもてなし経営企業」が選出される。
「おもてなし」は、「サービス」や「ホスピタリティ」に相当する言葉だ。したがって、「おもてなし経営企業」とは、サービス業に従事する企業から選ばれるべきであるとも考えられるが、この企業選では、対象企業を狭義のサービス業に限定していない。実は、そこにこの取り組みの狙いの一つがある。
サービスの生産性はなぜ上がらないのか
わが国において、サービス産業はGDPにおいて約7割、雇用数においても同じく約7割を占めている。しかし日本のサービス産業の生産性は、ほかの先進諸国と比べて極めて低いとかねてより指摘されてきた。
ものづくりが長く産業の中心であったわが国において、「サービスという形のないものによって大きな利益を生み出す」という考え方は現在でも広く浸透しているとはいえない。ファストフード店における「スマイル0円」というコピーに象徴されるように、サービスとは、モノを売る行為などのいわば付け足しとして無料で提供されるものであり、それ自体を明確に定量化することはできない。そんな考え方がなお根強いのがわが国の現状である。
しかし、人口減少が進み、市場が縮小していくこれからの日本において、「サービス」は大きな可能性を秘めた領域である。サービスの質を向上させ、サービスの付加価値を高め、収益性を上げていくという明確な目標を多くの企業が共有すれば、日本の経済にはまだまだ発展の余地がある。見方を変えれば、すでにモノが広く浸透しているわが国において、大きな成長がこれ以上に期待できる分野はほかにない──。「おもてなし経営企業選」の背景には、そのような考え方がある。