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領域を超える経営学
【第17回】 2014年5月2日
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琴坂将広 [立命館大学経営学部国際経営学科准教授],安宅和人 [ヤフー株式会社CSO]

特別対談
マネジメントがあれば、新入社員でも価値は出せる!
先輩からの学びに“味つけ”して「芯」をつくる
【ヤフー株式会社CSO・安宅和人×琴坂将広】

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イェール大学でPh.D.(博士号)を取得した脳神経科学者であり、マッキンゼーのコンサルタントとして活躍し、現在はヤフー株式会社でCSO(チーフストラテジーオフィサー)を務める安宅和人氏。そして、ベンチャー企業の経営者からマッキンゼーのコンサルタントを経て、オックスフォード大学でPh.D.を取得し、現在は立命館大学経営学部准教授として教鞭を執る琴坂将広氏。
マッキンゼー時代をともにし、それぞれの専門領域を超えて活躍する安宅氏と琴坂氏が、さまざまなトピックについて語る特別対談。対談は全3回。

9.11をきっかけに、ふたたびマッキンゼーへ

琴坂 私は、修士課程に入ったとき、研究が肌に合わなかったらコンサルティングに出戻りもありかなと思っていました。結局、博士号も取って、私はそのまま研究者の道に進んだのですが、安宅さんはそこで違う道を選んでいます。それはなぜですか?

安宅 僕は、9.11のテロがきっかけで帰ってきたんですよ。いろいろあったけれど、まあ、結果的には幸せに学位を取り、子どもも生まれて、楽しくポスドクをやっていました。そこに9.11があって、毎日人が泣いている電車に乗り、人が泣いているのを見ては自分も泣き、それに耐えられずに帰ってきたんです。これ以上、この国にいたら正気を失うと。

 振り返ってみると、人生の節目となる選択は、毎回それなんだよね。これが続くと精神的にまいるかもしれない、と思うと場所を変えています。マッキンゼーに入るときもそうだった。そのときの研究は、さまざまなことを総合すると、このまま続けるのは厳しいかなと思っていました。

 そのとき、たまたまアルバイト的にリサーチャーを体験したマッキンゼーから「安宅さん、うちに来なよ。2、3年、気晴らしでやったらいいじゃない。アカデミアにはその中で考えればいいし」と言われて移りました。

琴坂 そのときは、いずれは大学に戻るつもりでしたか?

安宅 はい。もともと大学に戻らないといけない、学位を取らなければという気持ちは強くて、本当に3年くらいで戻るつもりでした。でも、3年目の準備すべきタイミング(秋)は、そのとき入っていたプロジェクト内であまりにも外れられない役割に就いていたから、それどころじゃないまま過ぎてしまった(笑)。

 僕の先生はすでに退官されるタイミングだったこともあって、「大学に戻って学位を」という話を相談したところ、先生からもアメリカに行くことを勧められて。なので、「1年後のこの時期、僕は1ヵ月休みを取る」って宣言しました。結局、4年目の秋、2週間しか取れなかったんだけど(笑)。

 「1年前からの休みが取れないなんて、オレの人生をどうするんだ!」とは思いながら(笑)、2週間で頑張ってGRE(Graduate Record Examination)、TOEFLの勉強をしつつ、入学願書を用意して、なんとかイェール大学の博士課程に潜り込むことができました。

琴坂 仮の話になってしまいますが、もし安宅さんが研究者を続けていたら、どうなっていたと思いますか?

安宅 結構よくやっていたんじゃないかと思う。あのまま続けていたら、ちょっとした賞くらいは取れた可能性がなくはないかもと思うよ。そのくらいおもしろいことやっていたと思っています。

琴坂 テロがなければアメリカに残っていましたか?

安宅 そうだったと思う。日本でのサイエンスの恩師の教えもあって、永住するつもりで行きましたからね。

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琴坂将広(ことさか・まさひろ) [立命館大学経営学部国際経営学科准教授]

慶應義塾大学環境情報学部卒業。在学時には、小売・ITの領域において3社を起業、4年間にわたり経営に携わる。 大学卒業後、2004年から、マッキンゼー・アンド・カンパニーの東京およびフランクフルト支社に在籍。北欧、西欧、中東、アジアの9ヵ国において新規事業、経営戦略策定のプロジェクトに関わる。ハイテク、消費財、食品、エネルギー、物流、官公庁など多様な事業領域における国際経営の知見を広め、世界60ヵ国・200都市以上を訪れた。
2008年に同社退職後、オックスフォード大学大学院経営学研究科に進学し、2009年に優等修士号(経営研究)を取得。大学の助手を務めると同時に、国際経営論の研究を進める。在籍中は、非常勤のコンサルティングに関わりながら、ヨットセーリングの大学代表選手に選出されるなど、研究・教育以外にも精力的に活動した。2013年に博士号(経営学)を取得し、同年に現職。専門は国際化戦略。
著書に『領域を超える経営学』、共編著に『マッキンゼー ITの本質』(以上、ダイヤモンド社)、分担著に『East Asian Capitalism』(オックスフォード大学出版局)などがある。
Twitter:@kotosaka

安宅和人(あたか・かずと) [ヤフー株式会社CSO]

1968年、富山県生まれ。東京大学大学院生物化学専攻にて修士号取得後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。4年半の勤務後、イェール大学・脳神経科学プログラムに入学。平均7年弱かかるところ3年9ヵ月で学位取得(Ph.D.)。2001年末、マッキンゼー復帰に伴い帰国。マーケティング研究グループのアジア太平洋地域における中心メンバーの1人として、飲料・小売り・ハイテクなど幅広い分野におけるブランド建て直し、商品・事業開発に関わる。また、東京事務所における新人教育のメンバーとして「問題解決」「分析」「チャートライティング」などのトレーニングを担当。2008年よりヤフー株式会社に移り、現在は執行役員・チーフストラテジーオフィサーとして幅広い経営課題・提携案件の推進などに関わる。
著書に『イシューからはじめよ』(英治出版)がある。


領域を超える経営学

ベンチャー企業の経営者として実務に携わり、マッキンゼー&カンパニーのコンサルタントとして経営を俯瞰し、オックスフォード大学で学問を修めた琴坂将広氏が、3つの異なる視点でグローバル経営の過去、現在、そして未来を語る。『領域を超える経営学』(ダイヤモンド社)の出版を記念して、新進気鋭の経営学者が、身近な事例を交えながら、経営学のおもしろさと奥深さを伝える。連載は全15回を予定。

「領域を超える経営学」

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