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通貨革命か、それとも虚構か?「ビットコイン」を正しく理解する 野口悠紀雄

ケニアの通貨革命から学べること
――途上国で急速に広がるモバイル・マネー

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第9回】 2014年4月17日
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 「タクシーの料金を携帯電話で支払うのは、ニューヨークでは難しいが、ケニアのナイロビでなら簡単だ」

 英誌『エコノミスト』は、2013年5月の記事で、このように伝えている(Why does Kenya lead the world in mobile money?)。

 ケニアが導入したのは、携帯電話のSMS(ショート・メッセージ・サービス)で送金する「エムペサ(M-PESA)」と呼ばれるサービスだ。

 ビットコインの将来を考えるに当たって参考になることが多いので、以下にその概要を紹介しよう。

エムペサとは?

 このサービスは、ケニアの携帯電話会社サファリコムに出資した英携帯電話大手のボーダフォンが、2007年に開始した。

 エムペサの代理店(取次店)で現金を預けて自分のエムペサ口座に入金してもらってから、送金相手にSMSを送る。メッセージを受け取った人は、取次店でSMSと身分証明書を提示すると、現金を受け取れる。

 前記エコノミストの記事によると、ケニアの成人人口の3分の2以上にあたる1700万人がエムペサを利用している。エムペサを通じて行なわれる資金移動は、ケニアのGDP(国内総生産)の約25%に相当する。

 同国には、エムペサと同様のサービスが複数あり、成人人口の7割以上にあたる2300万人強が利用している。これは、携帯電話の送金サービスが、すでにケニアの人々の日常生活に欠かせない存在になっていることを意味する。

 エムペサ代理店は、ケニア全土で約4万軒ある。相当不便な地域にもある。銀行並みに立派な窓口が並ぶ代理店もあるが、物置小屋のような代理店もある(なお、国中どこでもサファリコムのサービスは利用できる)。

 ただし、額で見ると、現金のほうが圧倒的に多い。ケニアの取引の約99%は、キャッシュでなされている。エムペサの全口座残高の合計は、銀行預金残高のわずか0.2%にしかならない。これは、利用額に限度が設定されていて、少額取引にしか用いられないためだ(Is M-PESA Replacing Cash in Kenya?)。

 エムペサ普及の背景には、携帯電話の電話機本体や通話料が安くなったことがある。携帯電話は、安ければ1500ケニアシリング程度だ(1ケニアシリングはほぼ1円)。

 アフリカでは銀行口座を持つ人の割合は人口の10%以下だが、携帯電話の保有者は60%に上る。ケニアでの携帯電話の普及率は70%にも達する。

 そうであっても、携帯電話はまだ高いので、個人はSIMカードを持ち、10人くらいのグループで携帯1台を共有するようなことも行なわれている。

次のページ>> エムペサの仕組み
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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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通貨革命か、それとも虚構か?「ビットコイン」を正しく理解する 野口悠紀雄

インターネット上で使われている仮想通貨である「ビットコイン」にに対する関心が、急速に高まっている。この連載では、「ビットコインが何をもたらすにしても、それは通貨史上の大きな革命であるばかりでなく、まったく新しい形の社会を形成する可能性を示した」との認識に立ち、ビットコインの仕組みを解説し、それがもたらしうるものについて論じる。

「通貨革命か、それとも虚構か?「ビットコイン」を正しく理解する 野口悠紀雄」

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