吉野家に復活の兆しが見え始めた。高価格のメニューが大ヒットし、決算を上方修正しているのだ。しかし、その裏では牛丼へのこだわりの強さのあまり招いた収益構造の問題がある。

 吉野家の新メニュー「牛すき鍋膳」が大ヒットしている。かつては外食業界の優等生と呼ばれた同社も近年は業績悪化に苦しんできた。牛海綿状脳症(BSE)の騒動や外食需要の減少を受け、売り上げが漸減傾向にあったのだ。

 ところが、2013年12月に投入した牛すき鍋膳は異例の大ヒットとなり、12月の既存店売上高は前年比116%となった(図(1))。好調は持続していて、3月までどの月も売上高の前年比が110%を上回っているほどだ。

 吉野家は13年5月に牛丼並盛の値下げを行い、客数が増えたことで一時的に売上高が増加した。対して今回の増収は、内容が違う。牛すき鍋膳は初めて固形燃料を導入し具材にもこだわった結果、並盛で580円と、牛丼並盛の280円より300円も高いのだ。

 安部修仁・吉野家社長は「国内の外食市場は人口が増えない上に、外食の回数が多かった世代が社会の第一線から退いている。売り上げを伸ばすためには、単価を上げる以外にない」と明かす。

 その言葉通り、高価格な新メニューの好調を受け、吉野家ホールディングス(HD)は連結業績見通しを上方修正した。13年度の売上高を従来予想よりも14億円プラスの1734億円に、経常利益は10億円プラスの32億円を見込む。

 ヒットを一発当てれば、業績も一気に回復……と単純な構図に見えるが、その裏で吉野家を苦しめている問題がある。

 それは“肉”をめぐる構造的な問題だ。その問題は時に、吉野家自身の企業努力では解決できない政治的な側面を持つから、厄介だ。