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岸博幸のクリエイティブ国富論

「賃上げ、16年ぶり7000円台」という
日経新聞の記事への違和感

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第262回】 2014年4月18日
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 最近ずっと思っていることがあります。それは、どうも日経新聞の景気に関する記事は「これからデフレを脱却して景気が良くなる!」という願望に基づくものが多過ぎるのではないか、ということです。

賃上げはベアだけで考えるべきでは?

 その典型例は、4/17付けの「賃上げ、16年ぶり7000円台」という記事です。経団連集計に基づく大手企業の今春の賃上げの数字に関する報道で、「賃上げ率は2.4%で15年ぶりに2%を超えた」とありますが、この数字は定期昇給分とベアを合わせた賃上げ額です。

 このうち定期昇給分は、年功賃金と終身雇用を前提とする日本型正規雇用の仕組みの下では、労働者にとっては上がって当たり前の当然の権利であり、毎年上がるのを前提に住宅ローンを組むなど生活を組み立てている人も多いはずです。

 そう考えると、賃上げの是非はベアの部分で評価すべきではないでしょうか。そのベアだけでみた賃上げ率は0.4%に過ぎませんので、消費税増税分を賃上げではとてもカバーできないことになります。

 経団連が“企業の側は頑張ったんだ”と宣伝したいのは分かります。しかし、それをそのまま垂れ流すような記事にして、読者の側が景気の先行きについて本当に正しい判断ができるでしょうか。

 例えば、この記事の中では「仮に全企業でベアを0.4%実施すれば雇用者報酬は1兆円増える計算で、政府が企業優遇策として前倒し廃止した復興特別法人税の8000億円分をベアで返したことになる」とあるのですが、地方の中小企業も含む“全企業”が本当に大企業と同じだけのベアを実施できると思っているのでしょうか。楽天的すぎます。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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