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「おいしい」は店長でなくイェルプに言ってくれ!
米国の飲食店を悩ます“評判ビジネス”の現実

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第292回】 2014年4月23日
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 日本にも上陸を果たしたレビューサイトのイェルプ。アメリカでは、レストラン探しだけに限らず、スポーツクラブやスパの評判を確認したり、家の修理のために配管工や電気工を見つけたりするのに、もう日常的に利用されているサイトだ。

 イェルプのサイトによると、2004年に創設された同社サイトには、毎月1億2000万人のユニークビジターが訪れ、これまでユーザーは5300万本ものレビューを書いてきたという。ユーザーがレビューを投稿するサイトは他にもいろいろあるが、その中でイェルプはかなり中核的な地位を占めるようになっている。

 そして、これだけよく使われているため、レストランやショップの経営者にとってイェルプのレビューの内容はかなり神経を使う対象となっている。イェルプでの評判によって客足が左右されるからだ。著者の知り合いは、あるインド料理店で「おいしい」と店長に告げたところ、「オレに言わずに、イェルプに言ってくれ」と真面目な顔で返されたという。

 実際、イェルプでの星の数は売り上げに直結している。2011年にハーバードビジネススクールが行った調査では、星の数が1つ増えるごとに売上は5~9%増加することがわかった。ことに地元のレストランやショップのような中小規模のビジネスにとっては、イェルプの評判が悪いと命取りにもなりかねない。

 言葉を変えると、店にやってくる客は今やイェルプをバックにつけた強い立場。過剰と思えるほどにサービスを尽くさないと、安心できないような状況になっていることも確かだ。

株価急落のわけは
行き過ぎた評判ビジネス?

 そのイェルプの株価(ニューヨーク証券取引所に上場)が、先だって12%も下がるということがあった。

 理由は、イェルプに関して2008年から2050件近い苦情が公正取引委員会に寄せられていたことが明らかにされたことだ。ユーザーのレビュー投稿サイトについては、レビューの真偽性やフェアさにおいて何かと問題が多いが、イェルプの場合は同社自体がゆすり行為をしたという苦情があった。

 たとえば、レビューでの評判が悪いショップにイェルプから連絡が入り、目立つ場所にリストアップされる有償サービスを受けるように勧められた。つまり、広告出稿だ。それを断ったところ、その後同ショップに対してネガティブなレビューが投稿され、経営に打撃を与えたという。

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瀧口範子 [ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。


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