社内政治の道具になりかねない
強烈なインパクト

 この減損問題をめぐっては、東芝で「社内のパワーバランスにまでもインパクトを与えかねない」とひそかにささやかれている。

 これまで東芝において稼ぎ頭の一つであった原子力事業は、名門事業の筆頭格。6000億円もの大枚をはたいて米原発メーカー、ウェスチングハウスを買収するなど、東芝を支える柱という位置づけは揺るぎないものになっていた。

 09年に現副会長で原子力畑の佐々木則夫氏が社長に選ばれると、いよいよその権勢は高まり、「佐々木が社長の時代に、明らかに原子力畑の役員が増えた」(東芝関係者)という指摘も聞かれた。

 ところが、東日本大震災以降、国内では“原発ゼロ”の状況が長く続き、原発の定期検査という収益源がなくなったことで、国内部隊は赤字に陥った。一方、海外を主戦場とするウェスチングハウスも最近は苦戦が続いているという。

 その状況にSTPの減損まで重なれば、社内での原子力部門の立場は一気に揺らぐというわけだ。

 そこへさらに、「佐々木副会長の進退問題まで絡んでくる」と筋読みする東芝関係者もいる。

 西田厚聰会長が東芝の内規に従い、70歳となった今年で会長を退くのは既定路線だが、通常であれば後任の会長となるはずの佐々木氏は西田会長との不仲が公然とささやかれ、昨年には副会長という異例のポストに棚上げされたかたちになっている。

 そのため、原子力事業、それも佐々木氏が主導した案件で損害を被るとなれば、会長外しの格好の材料になるというわけだ。

 一方、現在経営のかじを握る田中久雄社長としては、14年3月期の減損は避けられたとしても、潜在的なリスクは抱えたままとなる。前任者のせいにもしやすい社長1年目の今こそ、膿を出し切るチャンスともいえる。

 減損をめぐる攻防の結果にかかわらず、5月8日に東芝が発表する通期決算には、そうした思惑がない交ぜになっているのだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木崇久)

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