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逆境経営 ~山奥の地酒「獺祭」を世界に届ける逆転発想法~
【第12回】 2014年5月23日
著者・コラム紹介バックナンバー
桜井博志 [旭酒造株式会社 代表取締役社長]

海外事業はストレスの元凶そのものだが
伝統から革新につながる何かが生まれる
能作克治・株式会社能作社長×桜井博志・旭酒造社長 対談

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銘酒<獺祭>を世に送り出した旭酒造の桜井博志社長が迎えるのは、「曲がる器」や「富士山の杯」など100%スズ製のテーブルウェアで話題の鋳物メーカー「能作」で直販拡大を指揮する能作克治社長です。お酒造りと鋳物造り…まったく畑の違う伝統産業を率いるリーダー同士が、「伝統を革新する」面白さや、世界に冠たる日本のモノづくりを海外に発信する際の難しさなどについて語り合いました。

能作克治(のうさく・かつじ)
1958年福井県出身。大阪芸術大学芸術学部写真学科を卒業後、新聞社勤務を経て、1984年に義父が経営する能作に入社。2001年東京原宿バージョン ギャラリー展示を機に、直販を徐々に拡大してきた。02年に代表取締役就任。東京都内を中心に直営ショップを増やしているほか、アジアや欧米など海外にも積極的に展開中。13年「第5回ものづくり日本大賞 経済産業大臣賞」賞受賞。売上高は前期の6億円から今期は8.5億円見込み。

能作 今日はお目にかかるのを楽しみに来ました。ご著書『逆境経営』を拝読したら、あまりに自分と共通項が多くて驚いていたんです! 桜井社長は昭和59(1984)年に社長を継がれたんですよね、私も同年に義父が経営する能作に入社したんです。今は自主開発製品の直販も増えましたが、当時は社員7人ぐらいの、まだ問屋さんに素材を提供する下請けメーカーでした。

桜井 こちらこそ宜しくお願いします。そうなんですか。昭和59年は私が社長を引き継いだ最初の年で、売上高は前年比85%とひどい状態で、今も忘れられません(笑)。「売れない」と社員の前で言うと、明日から来なくなるかもしれないから言えませんでしたよ。

能作 「会社の成長が社員の教育につながる」というお考えも、まさしくそうだな、と実感しながら読みました。うちも今では若い社員が増えたので、痛感してます。

桜井 能作さんは入社から17年、職人として腕を磨かれたとか。報道カメラマンから鋳物師へというのも、大きな転身ですね。

能作 そうですよね。もともとコマーシャルフォトがやりたかったので、報道写真にはなじめなくて、高岡が実家の福井に近いこともあり、割とあっさり来てしまったんです。

 能作は、加賀藩主の前田利家が鋳物師を招いて始まった“高岡銅器”の街、富山県高岡市で大正5(1916)年に創業して、仏具や茶道具などを作っていました。といっても、もともと江戸時代は殿様が職人を抱えて、お金出すから作りなさい、という構図ですから、製品の原型づくり→鋳造→仕上げ加工→着色という効率的な分業体制が広まっていて、能作はそのうち「生地屋」と呼ばれる、鋳造して加工するまでの工程を担ってきたわけです。

桜井 なるほど。お殿様の号令で始まったというのは、山口の萩焼なども同じですね(編集部注:萩焼は1600年代初頭に、毛利輝元の命で始まったとされる)。

能作 そうです。景気がいいときは得意分野に集中できていいんですが、悪くなると問屋さんは「売れないから」と売ってくれなくなって、高岡でも売上高がピーク時の3分の1か4分の1に落ちました。

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桜井博志 [旭酒造株式会社 代表取締役社長]

1950年、山口県周東町(現岩国市)生まれ。家業である旭酒造は、江戸時代の1770年創業。1973年に松山商科大学(現松山大学)を卒業後、西宮酒造(現日本盛)での修業を経て76年に旭酒造に入社したが、酒造りの方向性や経営をめぐって先代である父と対立して退社。79年に石材卸業の櫻井商事を設立して集中していた。父の急逝を受けて84年に家業に戻り、純米大吟醸「獺祭」の開発を軸に経営再建をはかる。社員による安定的な旨い酒造りを目指し、四季醸造の実現や遠心分離機の導入など改革を進めた。2000年頃から始めた海外販売を本格強化するため、2014年のパリを皮切りに海外直営店を出店予定である。


逆境経営 ~山奥の地酒「獺祭」を世界に届ける逆転発想法~

純米大吟醸「獺祭」を展開する旭酒造は、約30年前、普通酒を主体とするつぶれかけの酒蔵でした。先代である父の急逝により、急遽三代目を継いだ著者は、目の前の常識を疑い、新たな酒蔵として生まれ変わるべく、改革を進めます。変革を可能にし、海外約20カ国に展開するまでに至った、熱い心と合理的思考法を紹介します!

 

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