斎藤顕一の営業プロフェッショナル養成講座
【第12回】 2014年5月21日
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斎藤顕一  [ビジネス・ブレークスルー大学経営学部教授、同大学院経営学研究科教授]

バリュー・プロポジション強化:
類似点を列挙し、優位性を打ち出す [本質的問題解決Q&A]

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大口顧客は重要だけれども、一方で対中小の取りこぼしが目立ってきたならば要注意です。今回の質問は、市場のニーズが多様かつ細分化しているため集約できず、競合との差別化も打ち出せないという課題です。どうやら、事業活動のセグメントに問題がありそうです。


Question


重機中堅メーカーで全国営業拠点を統括しています。本社が大手案件を管理し、各拠点は中小案件がメインです。当社の製品は、多機能かつ高品質との定評があ りますが、大手と中小ではニーズも競合との差別化ポイントも異なります。昨今の当社方針としては、大手向けICT対応機が重要製品となりつつあり、中小案件の取りこぼしが目立ちます。その理由を整理すると、価格と、最新機能を不要とする製品仕様への不満です。営業本部としては、注力する対大手のほかに、対中小の営業戦略を持つ必要があるわけですが、各市場のニーズが多様かつ細分化しているため集約できず、競合との差別化も打ち出せず手をこまねいている状 態です。
(質問者:重機、男性、法人営業本部副部門長、43歳)


Answer


 なるほど、なるほど。よく見られるパターンですね(笑)。ナショナルアカウント(本社担当)の顧客は取引規模も大きいため重視するが、一方でローカルアカウント(拠点担当)の中小顧客が疎かにされる。顧客が100社あれば、それぞれの顧客が考えていることは100通りあるわけで、かと言って100通りの製品を開発するわけにもいかず、結局は売上に大きく貢献する顧客に焦点を当てざるをえなくなるということですね。

 興味深いことに多くの企業は、質問者の会社と同じように考え行動するようです(笑)。ですから大手企業の奪い合いは熾烈を極め、製品市場での競争がタケノコの背くらべの場合は価格競争に陥るため、粗利率が中小の顧客より低くなったりするのです。

プロダクトアウトは時代遅れ

 そもそも、ナショナルアカウントである大手顧客のすべてが最新機能を備えた比較的ハイエンド機を必要としているという考え方は、現在の市場環境で成り立つのでしょうか?

 確かに、大手企業は十分な資源を有し、これまではシェアを確保するための競争力強化の一環として設備投資を行ってきました。この傾向は右肩上がりの時代には普通に受け入れられ、よりマルチ機能を備えたハイエンド機種を上市して成果をあげてきたのでしょう。つまりメーカーは、機能領域を増やすことで製品の付加価値をあげ、それによってより高価格な製品を提供してきたわけです。それは、プロダクトアウトが成り立った時代の取り組みでした。

 ところが、バブル崩壊を境に、日本企業の平均売上成長性率はほぼゼロになりました。売上げが伸びないということは、バブル崩壊前の事業モデルである「よりハイエンドの高価格製品を拡販する」という考え方は通用しません。むしろ、同じ機能を備えた低価格製品や、必要とする単一機能を提供する低価格品が受け入れられるようになりました。つまり、大手顧客がハイエンド機種を購買した時代が終わり、顧客のニーズやウォンツに合った製品が売れる時代に変化したことを意味しているわけです。

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斎藤顕一 [株式会社フォアサイト・アンド・カンパニー代表取締役]
[ビジネス・ブレークスルー大学経営学部教授、同大学院経営学研究科教授]

マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社、パートナー、大阪支社副支社長を務め、1996年にフォアサイト・アンド・カンパニーを創業、現在に至る。経営コンサルティングに加えて問題解決のスキル研修を数多く手がけ、企業の業績向上に大きな成果を上げてきた。大前研一氏が学長を務めるビジネス・ブレークスルー大学において、経営学部および大学院経営学研究科教授。これまでBBTオープンカレッジ、学部、大学院の生徒や企業研修の生徒を合わせて、2万人以上の人たちに問題解決の考え方や実践の仕方、また成果実現の方法を教える。大前研一氏との共著に『実戦! 問題解決法』(小学館)、『大前研一と考える「営業」学』(ダイヤモンド社)がある。単著に『[新版]問題解決の実学』(ダイヤモンド社)がある。

 


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「営業の達人」のスキルは努力の賜物であり一朝一夕に身につくものではありません。でも実は、日々の営業活動のなかに、これを習得する近道があります。困っていること、わからないこと、迷っていること等々は「営業目標を達成するために最も重要な成功の鍵」です。これらの問題を「発見」し、「解決」することで、営業プロフェッショナルとしてのスキルが培われます。

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