道路特定財源問題をめぐる国会空転で、税金の使われ方が俄然注目されるようになった。収入は増えないのに物価は上がり、生活は苦しくなる一方。そんな状況下、役人による税金の無駄づかいに国民が怒るのは当然だ。道路に限らず、国が行うさまざまな事業で予算の使われ方がチェックされている。

 そんな中、まだあまり話題になっていないのがスポーツの分野。スポーツ振興にも多額の税金が使われているのである。

トップアスリートのための
“国営”トレーニング施設

 今年1月、東京都北区にナショナルトレーニングセンター(NTC)がオープンした。オリンピックなどの国際大会に出場するトップアスリートのために造られた国営のトレーニング施設である。

 屋内施設は地上3階、地下1階。体操や柔道、卓球、バレーボールなど10競技の専用練習場がある他、プール、共用コート、トレーニングルーム、研修室、ミーティングルームなども備えている。

 また、400メートルトラックがある屋外トレーニング施設、屋内テニスコート、約250人収容の宿泊施設も併設。トップアスリートがトレーニングに集中できる至れり尽くせりの施設で、総事業費は370億円である(NTCの施設に限れば210億円)。

 運営するのは文部科学省の外郭団体である独立行政法人日本スポーツ振興センター(NAASH)。2003年に設立された団体で、国民のスポーツ振興や健康増進を目的に、国立競技場の運営やスポーツ科学の研究、スポーツ振興くじ(toto)の実施などを行っている。この団体の資本約2000億円は国が出資。年間数十億円の補助金も政府から出ている。

日本スポーツ界の
半世紀にわたる悲願

 NTCの設立は日本スポーツ界の半世紀近くにわたる悲願だった。競技関係者がその必要性を感じ、NTC設立を訴え始めたのは東京オリンピックを控えた1950年代後半。だが、当時の日本は高度成長が始まったばかりで、トップアスリートのためだけの施設を造る発想も余裕もなかった。そのため東京オリンピックの前は自衛隊体育学校の施設を代用に使った。

 NTCはスポーツ先進国の多くが持ち、競技力強化につなげている。アメリカ、ドイツ、英国、フランス、オーストラリア…、アジアのライバルである中国、韓国にもあり、多くの競技を強化した。