「上海には今、どれだけの日本人が住んでいるの」

 NHKの土曜ドラマ「上海タイフーン」も手伝ってか、こんな質問をされることがよくある。今年9月外務省が発表した資料によれば、上海に長期滞在する日本人数(07年10月1日時点)は4万7731人。NYの4万0068人を抜いて、都市別ではついに世界一に躍り出た。

 すでに上海には、05年11月時点でバンコクを抜いて世界一のマンモス校になった上海日本人学校がある。日本語フリーペーパーの種類や露出、日本料理店の新規出店の勢いを見るだけでも、上海の日本人の密度の高さが伺える。

 上海に来れば仕事もあるし、物価も安い。何より日本国籍ならそこそこ大きな顔をして生活できる――、動機は人さまざまだが、煎じ詰めれば所詮こんなところだ。1920年代後半、上海に滞在した詩人、金子光晴は著書『どくろ杯』で「きたないことが平気になれば、物価がやすく、くらしの上でうるさい世間がないことが魅力であった」と書いているが、大正の世も平成の世も、日本人が上海に求めたものは大きく変わらない。

中国人もあきれる
上海で働く“3F”日本人たち

 だが、最近はちょっと様子が違う。「日本人」は以前のように「一目置かれる存在」ではなくなってしまった。上海市民も、以前は「優秀な日本製」=「(それを作ることができる)優秀な日本人」と評価してきたが、実は日本人が現地企業のお荷物になっているケースもある。

 「もう“ダメ日本人”は上海に来ないでほしい」

 ズバッと本音を吐くのは、某日系企業に勤務する中国人社員だ。同社は最近、上海で日本人女性を採用した。中国で働く日本人は、本社企業が派遣する駐在員と、現地で求職し、採用される「現地採用」の2つがあるが、彼女は後者。しかし、中国語や英語に堪能なわけでも、営業力があるわけでもなかった。何の特技もないこの日本人を採用したのは、「ブランド企業で働きたい」という彼女の熱心さに押されたためだった。