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日の丸製造業を蘇らせる!“超高速すり合わせ型”モノづくりのススメ

ソニーから離れてソニーらしくなれるVAIO株式会社
規模の戦いに負けて初めて気づく「日本らしい経営」

松本晋一 [株式会社O2/株式会社XrossVate/株式会社安田製作所代表取締役]
【第9回】 2014年6月4日
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 「VAIO、投資ファンドに売却だってよ。うちの事業部でなくてよかったな」

 ソニーのVAIO事業が日本産業パートナーズの投資ファンドに売却されることが発表された運命の5月28日、こんな会話がソニー社内で多くやり取りされたのではないか。

 かたやソニー、かたやファンド。ある日を境にして、VAIOに携わる社員の保険証から慣れ親しんだ「ソニー」という呼称が消える。まさに、天国と地獄といったところか。

 しかし、本当にそうだろうか? 筆者は、逆の意見を持っている。

 数年後には「VAIO株式会社」こそが、井深大さんや盛田昭夫さんの志を受け継いだソニーらしい企業になっているのではないかと感じる。「VAIO株式会社」は、この7月からわずか200名程度の小集団でスタートする。自ら残りたいとハラをくくった、熱き想いを持った人たちの集団だ。

 小規模なので、ムダに規模を追い求める必要がない。本来のソニーらしい、「自分たちがつくりたいモノをつくる」ことができる。数年後には、ユニークで尖った商品を発表し、市場で独特の存在感を発揮しているだろう。ひょっとして、「和製アップル」と呼ばれているかもしれない。

 一方、5月28日の報道で「ほっと」胸をなで下ろしたソニーの残留社員は、その後も大きな変化を感じられず、ムダに時間ばかりを費やし、気が付けば「VAIO株式会社と、どちらがソニーかわからない」と揶揄されているかもしれない。

日本のモノづくりの強さはメカ的技術
徹底した「すり合わせ」が価値を生む

 「ダメか……」

 「いえ、ポイントは記憶装置です。『VAIO』は部品を高密度に重ねることで小型化と水没対策をしているので、途中で紅茶が止まっている可能性があります」

 プロは諦めていない。

 フラットケーブルのコネクターを横にずらし、マイクロスコープで基板の裏に隠れている記憶装置を確認する。

 「大丈夫ですよ。たぶん。紅茶はここまでは来ていません」

 一旦、PC内部の水分を全て飛ばし、数時間暖房器具の前で乾燥させた後に、電源を入れた。PCが起動した。一部、キーボードが死んでいたが、データに損害はなく、大事には至らなかった。

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松本晋一 [株式会社O2/株式会社XrossVate/株式会社安田製作所代表取締役]

株式会社O2(オーツー)株式会社XrossVate(クロスベイト)株式会社安田製作所代表取締役。1970年生まれ。千葉県出身。早稲田大学政治経済学部経済学科卒。大手化学メーカー、外資系ITベンダーのディレクター、コンサルティングファームのディレクターなどを経て、2004年株式会社O2を設立、代表取締役就任。2013年に新会社XrossVateを設立。2014年に射出成型用金型メーカ株式会社安田製作所に出資を行い経営参画。


日の丸製造業を蘇らせる!“超高速すり合わせ型”モノづくりのススメ

日本の製造業は危機に瀕していると言われて久しい。様々な業界関係者が口にする「日本企業は技術で勝っても事業で負けている」という言い訳は、本当に正しいのか。実は、日本のゲンバにはもっと根深い本質的な課題がありそうだ。日本企業の5重苦、7重苦の原因は、日本の技術力の低下そのものにあり、その原因は大きく「技術伝承」の放置と悪い意味での「部分最適思考」の2つにある。製造業を中心に大手企業のコンサルティング業務を手がけ、企業のゲンバと深い付き合いを続けてきた株式会社O2(オーツ―)の松本晋一代表取締役が、“超高速すり合わせ型”モノづくりの極意を説く。

「日の丸製造業を蘇らせる!“超高速すり合わせ型”モノづくりのススメ」

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