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相川俊英の地方自治“腰砕け”通信記

住民自らが開設した「生活バス」がついに運行開始
行政や補助金に頼らない地域活性化のあり方とは?

相川俊英 [ジャーナリスト]
【第96回】 2014年6月6日
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 暮らしやすい街づくりは、行政がひとえにやるべきものだと考える向きが多い。そのために自分たちは税金を払っているのだと、言い切る人もいる。暮らしやすい街にするために自らが行動するというタイプは、そう多くない(特に都市部では)。

 行政に「あれをしてくれ」「これをしてくれ」と要求や陳情を繰り返したり、逆に「あれはだめだ」「これもだめだ」と抗議や反対の拳を突き上げる人たちの方が多い。地域に何らかの問題が生じた場合、行政に「なんとかしてくれ!」と駆け込むのが一般的だ。  

 そんな現実ばかりを見てきたので、今回のケースはとても新鮮で、かつ爽快だった。こういう住民の活動こそが、今の日本社会にとって最も必要なものなのではないか。そんな思いが取材を続けるうちに、ふつふつと湧いてきた。

高運賃の北総鉄道に代わる住民の足
「生活バスちばにう」がついに運行開始

いよいよ運行開始する「生活バスちばにう」。行政や補助金に頼らずに、住民自らが開設した路線バスだ

 鉄道運賃の高さに泣かされ続けてきた千葉ニュータウンの住民らが、行政や補助金に頼らずに路線バスの開設を目指している一件だ。連載第89回で紹介した千葉ニュータウンの住民による「生活バスちばにう」の取り組みである。

 来週月曜日(6月9日)から、「生活バスちばにう」の路線バスがいよいよ走り出す。千葉ニュータウン中央駅と新鎌ケ谷駅間をノンストップで平日に22.5往復する。運賃は300円で、並行して走る北総鉄道(560円)の半額ほどである。

 バス運行の認可はすでに5月29日に下りており、6月5日に2台の新車の大型バスにナンバープレートが設置された。5日から7日までテスト走行を実施し、9日午前6時に千葉ニュータウン中央駅から初便のバスが新鎌ケ谷駅に向けて発車する。また、午前10時には千葉ニュータウン中央駅北口で記念セレモ二―が予定されている。構想からわずか約1年半で、全国的にも稀有な住民発議による路線バスの開設が実現することになる。

 千葉ニュータウンは、公共交通網に難点を抱えていた。都心との間を結ぶ公共交通機関が北総鉄道のみで、しかも全国指折りの高運賃ときていた。地域を走る路線バスは北総線各駅への連絡線にすぎず、鉄道を補う位置付けとなっていた。

 車を持たない住民は高運賃の北総鉄道を利用するほかなく、気軽に移動できない状況を強いられた。さらに通勤や通学の定期代は目の玉が飛び出るほど高く、「財布なくしても定期なくすな」が住民間の合言葉となるほどだった。

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相川俊英 [ジャーナリスト]

1956年群馬県生まれ。放送記者を経て、1992年にフリージャーナリストに。地方自治体の取材で全国を歩き回る。97年から『週刊ダイヤモンド』委嘱記者となり、99年からテレビの報道番組『サンデープロジェクト』の特集担当レポーター。主な著書に『長野オリンピック騒動記』など。


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国政の混乱が極まるなか、事態打開の切り札として期待される「地方分権」。だが、肝心の地方自治の最前線は、ボイコット市長や勘違い知事の暴走、貴族化する議員など、お寒いエピソードのオンパレードだ。これでは地方発日本再生も夢のまた夢。ベテラン・ジャーナリストが警鐘を鳴らす!

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