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相川俊英の地方自治“腰砕け”通信記

お金ではなく心を動かす幸せなコミュニティづくりを
利用広がる藤野の地域通貨「萬」(よろづ)の教訓

相川俊英 [ジャーナリスト]
【第94回】 2014年5月27日
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全国の地域通貨ブームが下火のなか
藤野地区の「萬」はなぜ拡大している?

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神奈川県相模原市藤野地区の地域通貨「萬」(よろづ)の通帳。人に何かをしてあげると「プラス萬」、何かをしてもらうと「マイナス萬」が記載される

 特定の地域や住民に限定して流通するのが、地域通貨だ。商店会や住民団体などが地域活性化や住民間の相互扶助を目的に発行するもので、もちろん、正式の通貨ではない。

 地元にちなんだ名称の紙幣をつくり、モノやサービスのやり取りに使用するのが一般的だ。こうした地域通貨が一時はブームのようになり、全国各地で競うように発行された。

 しかし、発行当初の勢いを持続させている地域通貨は少ない。いつの間にか利用する住民や店舗が減り、下火となってしまうケースが相次ぐ。そんな中、紙幣方式ではない地域通貨を発行し、その利用を広げている地域が存在した。連載第91回で紹介した神奈川県相模原市藤野地区(旧藤野町)である。

 藤野地区で流通している地域通貨は、「萬」(よろづ)というものだ。藤野地区はもともと地域活動が盛んなところで、色々な住民グループが様々な活動を展開させている。その1つに「トランジション藤野」というものがある。地域が核となった持続可能な社会を目指す住民たちの集まりで、この「トランジション藤野」の部会の1つが、2009年11月に「藤野地域通貨よろづ屋」を参加者15人でスタートさせた。中心となったのは、「トランジション藤野」のコアメンバーである池辺潤一さんだ。

 地域通貨といっても「萬」という紙幣は発行されておらず、通帳方式となっている。現在、「萬」への参加登録者は350人(メーリングリスト上の数字)に上る。内訳は旧藤野町民が75%、旧相模湖町民が5%、他は近隣の県外の人たちである。「藤野地域通貨よろづ屋」とは、いったいどのようなものか。

 5月25日の日曜日。「藤野地域通貨よろづ屋」が説明会を開くと聞き、藤野を訪ねてみた。会場となったのは、相模湖岸に立つ廃業したホテルの一角。参加者は靴を脱ぎ、木製の床に車座となった。30代を中心とした計14人。ほかに幼い子どもが3人、母親に抱っこされていた。

 「地域通貨は、円よりも豊かな気持ちになれる生活を送るためのものです。お互い様で助け合っていくので、おカネだけではなくて人の心が動くものです」

 こうやさしく語り始めたのは、「藤野地域通貨よろづ屋」事務局スタッフのmeenaさん(通称)。萬の理念と仕組み、取引事例や会員登録の手続きなどについて丁寧に説明する。

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相川俊英 [ジャーナリスト]

1956年群馬県生まれ。放送記者を経て、1992年にフリージャーナリストに。地方自治体の取材で全国を歩き回る。97年から『週刊ダイヤモンド』委嘱記者となり、99年からテレビの報道番組『サンデープロジェクト』の特集担当レポーター。主な著書に『長野オリンピック騒動記』など。


相川俊英の地方自治“腰砕け”通信記

国政の混乱が極まるなか、事態打開の切り札として期待される「地方分権」。だが、肝心の地方自治の最前線は、ボイコット市長や勘違い知事の暴走、貴族化する議員など、お寒いエピソードのオンパレードだ。これでは地方発日本再生も夢のまた夢。ベテラン・ジャーナリストが警鐘を鳴らす!

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