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株価下落で露呈した進歩のない日本の銀行経営

山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]
【第53回】 2008年10月29日
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 日本の銀行は、サブプライム問題では比較的傷が浅かったため、相対的に米欧の金融機関よりも状況はいい。しかし、その理由は、バブル処理に追われ、国際金融への展開が遅れていたためであり、いわば「怪我の功名」であった。株価がバブル後の最安値を更新するところまで下落してしまうと、安穏とはしていられなくなってきた。

 結論から言えば、日本の銀行は、あれだけのお金と手間をかけて、やっと経営を立て直してきたにも関わらず、体質が何も変わっていない。要は、低金利と景気回復に助けられて、不良債権処理をし、多少の利益を蓄え、立派になったような顔をしていただけなのだ。経営的な質的改善は全くなかった。

 率直に言って、筆者にも、世界的な金融の混乱を受けて、日本の金融にもあちこちに問題が出てくるのではないか、何か手当てをしなければならないのではないか、とした漠然とした感覚はあった。

 メガバンクは三行(三菱UFJ、みずほ、三井住友)とも自己資本比率が6月時点で10%を超えていたので、急に大きな問題は起きないだろうと考えていたが、そこから下のクラスの銀行や地銀の中には相当な痛みが出ているところもあるのだろうと推察していた。

 しかし今回この金融機関の問題が議論される手順を見ていると、何とも胡散臭くて、釈然としない。中でも、時価会計の一部凍結はインチキではないか。

 つい最近まで偉そうなことを言っていたのに、アメリカは、時価会計の適用範囲に関して妙に柔軟だ。こうした動きを見て、チャンスだと思ったのか、地銀協などが日本でも時価会計を停止してくれと強く要望し、これを緊急経済対策に含めるという方向に話が動いている。金融機関が保有している変動利付き国債などの含み損がかなり膨らんでいると見られ、その部分をごまかそうとしている程度が真意かと思っていたら、ここに来ての株価下落もあって、金融業界全体から時価会計停止を求める声が出てきた。

 証券化商品はほとんど値が付かない状態にあることから、どこかで投売りが起こると、その投売り価格が時価になってしまうのはいかがなものか、というのが時価会計停止派の理屈らしい。

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山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]

58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役。


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