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農業開国論 山下一仁

「農協」と「減反」に“NO”と言える政治がいまこそ必要

山下一仁 [キヤノングローバル戦略研究所研究主幹/経済産業研究所上席研究員(非常勤)]
【第5回】 2008年9月5日
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 仮に民主党が政権を奪取した場合、自民党が墨守してきたコメの減反政策は撤回されるのか――。結論からいえば、それは期待薄だ。

 民主党は昨年7月の参院選挙に際して、生産調整(減反)の廃止と農家への戸別所得補償の導入をマニフェストにいったん掲げたが、今年に入って、生産調整廃止を撤回した。

 生産調整の強化を謳い続ける自民党ほどではないにせよ、結局、票田である農家を束ねる農協が支持する生産調整を頭から否定することは民主党にもできない。“減反廃止”の四文字は選挙を前にした政治家には党派の別なく文字通りの「禁句」なのである。

 筆者はかねてより日本の農業復興と食糧安保のためにはコメの減反に終止符を打ち、輸出によって縮小から拡大に転じるべきだと説いてきた。だが、その改革を阻むのが、戦後農政を形作ってきた農協と政治の持たれ合いである。今回は、福田首相の辞任表明によって政治の大きな節目を迎えた時期でもあるので、このタブーに敢えて斬り込みたいと思う。

転作奨励金だけもらい
収穫しない「捨て作り」も横行

 そもそも、農協とは何者なのか。正しくは、農業者によって組織された協同組合のことを指すが、一般にその略称で呼ばれるのは、全国農業協同組合中央会が組織する農協グループ(総合農協=JA)のことである。

 その母体は、明治時代の1900年に作られた産業組合にまで遡る。当初は農家に対する信用(融資)事業に特化していたが、太平洋戦争中に策定された食管法に基づき生産物を一元集荷する目的で、全農家を加入させた上で、資材購入、農産物販売、信用事業など農村・農家の諸事業を総合的に行う統制団体に改組された。

 その後、戦後の農地改革の一環として、GHQは一時、農協を解体し、行政から独立した欧米型の農家の自主的・自発的な組織である農業協同組合を作ろうとしたが、当時は深刻な食糧難にあり、食料を統制・管理する必要があった。そのため統制団体を農協に衣替えし存続を許されたという経緯がある。

 欧米諸国の農協が酪農、青果などの作物ごと、生産資材購入、農作物販売などの機能ごとであるのに対して、日本の農協は規模、事業範囲、政治力のいずれでも、世界的に抜きん出た存在となっている。

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山下一仁 [キヤノングローバル戦略研究所研究主幹/経済産業研究所上席研究員(非常勤)]

東京大学法学部卒業。同博士(農学)。1977年農水省入省。同省ガット室長、農村振興局次長などを経て、2008年4月より経済産業研究所上席研究員。2010年4月よりキヤノングローバル戦略研究所研究主幹。主著に『日本の農業を破壊したのは誰か―農業立国に舵を切れ』(講談社)、『企業の知恵で農業革新に挑む!―農協・減反・農地法を解体して新ビジネス創造』(ダイヤモンド社)、 『農協の大罪』(宝島社新書)、『農業ビッグバンの経済学』(日本経済新聞出版社)、『環境と貿易』(日本評論社)など。


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