お客様以外まで調べるなんて、一見、ムダな作業に見えるかもしれません。

 でも、業界の構造や課題を知らなければ、お客様独自の課題も見えてきません。業界の問題を知ることで、お客様がおかれた環境や課題を予想できるようになり、お客様自身からより深い情報を聞き出すことができます。それが、結果的にお客様に最適な商品・サービスの提案につながります。

お客様自身から社内の課題を聞き出す

 さて、業界環境や課題がわかったところで、次は、お客様自身にみずからの課題を質問形式で聞いてみます。課題を引き起こす原因は、必ずお客様のなかにあります。そこで、お客様に直に質問して、課題とその原因を洗い出し、解決策を考えていきましょう。

 ある貴金属小売業で営業利益率の向上が課題だったお客様の事例(具体的数字は変えてあります)を紹介します。

 決裁者から「期限の合意」を得る前は、具体的な営業利益率や利益率を向上させるための商品点数、原価率、在庫金額といった重要な情報はまったく教えていただけませんでした。なぜなら、それは企業の機密情報だからです。

 でも、「期限の合意」を得たことで、お客様が信頼してくださり、営業利益率が業界平均の20%を下回る18%であることや、その背景にある深刻な状況を教えてくれました。商品点数や原価率は業界平均並みでも、在庫金額が平均より40%多い50億円もあったため、営業利益率を押し下げる原因になっている、といった機密情報を入手できたのでした。

 この情報をもとに提案したのは、高額な貴金属商品の在庫管理を、従前のロット(ひとかたまり)管理から商品一点一点を管理する単品管理に変更するためのシステムです。単品管理によって在庫を削減すると、在庫金額50億円の40%にあたる20億円と、その金利分(年率2%)の年間4000万円のコストが削減ができ、営業利益率は業界平均を上回る22%を達成できる、という内容でした。お客様は大変喜ばれ、無事に受注できました。

 このようなお客様の心に響く提案ができたのも、この前段のステップ2でお客様と「期限の合意」ができたことでお客様が胸襟を開き、情報を教えてくれたからこそ、です。「期限の合意」をとりつけることが、真の課題を解決できる提案につながり、契約できる可能性が高まるのだ、ということもあらためて肝に銘じましょう。


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