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加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

ハーバード大学で学ぶ中国人は
祖国の民主化を促す原動力となるか?

加藤嘉一
【第30回】 2014年6月17日
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例外なく共産党にマーク
されている中国人留学生

 2014年6月4日、私はハーバード大学のキャンパス内で、地方政府の共産党幹部、Wさんとにらめっこしていた。

 日中関係や中国の経済・社会問題などをざっくばらんに語り合っていたが、時期が時期だけに、話題は自然と“天安門事件25年”に及んだ。

 共産党関係者であっても、1対1で、私的な場面であれば中国で25年間タブーとされてきた天安門事件の話ができたりする。複数のマルチな場面では、相互監視という観点から同事件を語るのを敬遠する中国人が多い。そういう場合は、私も空気を読んで話題を振らないようにしている。

 「私はここハーバードで学んでいるような中国人留学生の問題意識や価値観に関心を持っています。中国人として、かつ自由民主主義を謳歌する環境で学んだ彼ら・彼女らが、将来的に中国の発展にどうコミットしていくか。特に、政治改革のプロセスをどう促すか。より具体的に言えば、アメリカで学んだ自由民主主義の概念をどう祖国に持ち帰るのか。中国民主化研究という観点から、彼ら・彼女らの動向を追っています。Wさんは何か考えるところありますか?」

 私の問題提起をしんみり聞いていたWさんは、20秒くらい沈黙を保ち、見解を選ぶように、言葉を絞り出すように、語りかけてきた。

 「加藤さんの視角はユニークだし、テーマ設定としては面白いが、なかなか現実性に欠けるかもしれない。ハーバードに来ているような人間はみんな何かしらの形で中国国内と強いつながりを持っている。中国経済が発展しているなか、皆将来的に中国市場でカネを稼ぎたいと思っている。中国でカネを稼ぐ方法の鉄則は共産党を敵にしないことだ。下手に民主化を訴えたり、共産党政権を転覆するような言動を取れば、二度と中国ではまともに働けなくなるだろう」

 Wさんの言うとおりだ。

 中国という場所では“社会主義”と“市場経済”が密接につながっている。両者を戦略的につなげたのはトウ小平(トウの字は「登」におおざと)だ。共産党から政治的にNGの烙印を押された人間は当局から監視され、場合によっては制圧を受け、市場経済の舞台でもまともに活動できなくなる。

 Wさんは続ける。

 「政治に関わるのであればなおさらだ。親が党の幹部だったり、大学教授だったり、大企業の幹部だったりすれば、その子孫は必ず保守派になるし、表には出てこない。ここアメリカだからこそ言動に慎重になるし、問題は決して起こさないはずだ。党はハーバードで学んでいるような学生はほぼ例外なくマークしているのだから」

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加藤嘉一 

1984年生まれ。静岡県函南町出身。山梨学院大学附属高等学校卒業後、2003年、北京大学へ留学。同大学国際関係学院大学院修士課程修了。北京大学研究員、復旦大学新聞学院講座学者、慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)を経て、2012年8月に渡米。ハーバード大学フェロー(2012~2014年)、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院客員研究員(2014〜2015年)を務めたのち、現在は北京を拠点に研究・発信を続ける。米『ニューヨーク・タイムズ』中国語版コラムニスト。日本語での単著に、『中国民主化研究』『われ日本海の橋とならん』(以上、ダイヤモンド社)、『たった独りの外交録』(晶文社)、『脱・中国論』(日経BP社)などがある。

 


加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

21世紀最大の“謎”ともいえる中国の台頭。そして、そこに内包される民主化とは――。本連載では、私たちが陥りがちな中国の民主化に対して抱く“希望的観測”や“制度的優越感”を可能な限り排除し、「そもそも中国が民主化するとはどういうことなのか?」という根本的難題、或いは定義の部分に向き合うために、不可欠だと思われるパズルのピースを提示していく。また、中国・中国人が“いま”から“これから”へと自らを運営していくうえで向き合わざるを得ないであろうリスク、克服しなければならないであろう課題、乗り越えなければならないであろう歴史観などを検証していく。さらに、最近本格的に発足した習近平・李克強政権の行方や、中国共産党の在り方そのものにも光を当てていく。なお、本連載は中国が民主化することを前提に進められるものでもなければ、民主化へ向けたロードマップを具体的に提示するものではない。

「加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ」

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