いよいよ、改正生活保護法が施行開始となる2014年7月1日まで、あと10日ほどとなった。改正生活保護法に含められた「扶養義務強化」「就労指導の強化」などは、あるいは生活保護を利用している人々・これから利用しようとする人々・あるいはその周辺の人々に対してどのような影響を及ぼすかは、現在のところ未知数だ。

今回からは3回にわたり、現在の大阪市で既に行われている独自の生活保護行政について紹介したい。今、大阪市で何が行われており、何が問題なのだろうか?

なぜ、大阪市が問題なのか?

 大阪市では、長年にわたって生活保護率の高さが問題とされてきた。2011年に放映されたNHKスペシャル「生活保護3兆円の衝撃(後に書籍化)」でも、当時の大阪市の状況が克明にレポートされている。同番組のWebページによれば、

「全国一受給者が多い大阪市では、市民の18人に1人が生活保護を受け、今年度計上された生活保護費は2916億円、一般会計の17%近くを占めている。危機感を抱く大阪市は「生活保護行政特別調査プロジェクトチーム」を設置、徹底的な不正受給防止にあたると共に、受給者の就労支援に乗り出している」

 ということだ。

 全国第2の政令都市であり、約260万人が在住する大阪市の生活保護行政の動向は、同様に「生活保護利用者が多い」という問題、さらに言えば深刻な貧困という構造的な問題を抱える各都市・各自治体に、さまざまな意味で参考にされる可能性が高い。また大阪市長・橋下徹氏には、生活保護行政をはじめとする大阪市独自の政策を全国のモデルケースとし、国に対して政策提言を行いたいという意図もあると聞く。

 規模の面だけでも全国に対する影響力が大きい大阪市で、市長にも「全国のモデルケースとしたい」という意図があるとなれば、全国の生活保護行政の今後の可能性の1つとして、大阪市の現状は到底無視できない。

 筆者は、弁護士・元ケースワーカー・支援者など多様な人々で構成される「大阪市生活保護行政問題全国調査団」に同行し、2014年5月28日から5月29日にかけ、大阪市の各区役所・大阪市との交渉・懇談に同席した。また生活保護利用者・支援者などからも現状に関する話を聞いた。

 結論からいうと、現在の大阪市では、生活保護法の趣旨や精神からいって「ありえない」と言うべきことが続発しているのだ。今回からは3回にわたり、大阪市の生活保護行政の現状をレポートする予定である。