昨秋以来、内閣官房の「パーソナルデータに関する検討会」の委員をさせていただいている。この検討会ではビッグデータを念頭に個人情報保護法の改正に関わる議論をする場であるが、情報を扱う以上、技術とは無縁ではないということで、同検討会に技術検討ワーキンググループ(技術WG)を設置することになり、僭越ながら、その主査も務めさせていただいた。

 先週、個人情報保護法の改正に関わる大綱がまとまったが、今回は法改正そのものの話ではなく、当方が法改正という制度設計に関わることにした理由について書きたい。なお、大綱については別の機会に譲ることとする。

個人情報保護法改正で、
世界的に例のない先駆的な制度を提案

 その理由だが、ひとことで言うならば、ITという技術が生み出した問題を、ITだけでは解決できなくなっており、その解決にはIT以外、特に制度の助けが必要となってきていることである。

 実際、昨今のプライバシー問題は、ITという技術の発展が新しいプライバシー問題を作り出しているところがある。

 例えばインターネットの普及は世界規模で情報の共有を可能にしたが、同時に個人に関わる情報(パーソナルデータ)も瞬時に世界中に拡散させてしまう。顔識別技術は向上しており、友人といっしょに写った写真をSNSに掲載するだけで、自動的にその写真に誰が写っているかが特定されてしまう。

 ところで、著者はITという技術の研究を生業にしている。それだけに技術が生み出してしまった問題は、技術で解決したいが、解決できるとは限らない。特にITに関しては、これだけ社会に普及していると、技術の問題による社会的な影響も解消しないと解決したとはいえない。

 例えばパーソナルデータがひとたびWebを通じてインターネット上で公開されてしまったら、Web検索サービスなどにより、そのデータは収集され、一日もたたないうちに世界中で数百というコピーが作られてしまう。残念ながら、そのコピーすべてを確実に消すことは不可能であり、社会的な影響を消し去ることができるとは限らない。

 技術屋としては悔しい思いもあるが、技術で解決できないのであれば、技術以外の方法で解決をはかるしかなく、その有力な方法は制度による補完である。

 実際、前述の技術WGでは技術の問題を制度で補完する枠組みについて提案することとなった。具体的には「第三者提供」、つまりパーソナルデータの売り買いに関わる部分である。